カルシニューリンインヒビター長期投与腎移植症例の臨床病理学的検討

京都府立医科大学 臓器応答探索医学講座
* 岡本 雅彦、瓜生原 健嗣
同大学院 移植・再生制御外科学
秋岡 清一、牛込 秀隆、樋口 濃史、昇  修治 、荻野 史朗
貝原  聡
同大学院 腎臓・高血圧病態制御学
八田  告
同大学院 計量診断病理学
浦崎 晃司
京都府立医科大学 臓器応答探索医学講座
同大学院 移植・再生制御外科学
吉村 了勇

【目的】 当施設で腎移植を行い、導入期よりカルシニューリンインヒビター(CNI:シクロスポリンまたはタクロリムス)を投与し、長期(7年以上)経過した9例に対し移植腎生検を施行し、病理所見につき検討したので報告する。
【 目的・対象 】
9症例の移植時年齢は29±6歳(16歳−38歳)で、ドナーは両親が6例、兄弟が1例、死体腎移植が2例、ドナーの平均年齢は54±9歳(44歳−70歳)であった。原疾患としては2例が1型糖尿病であった。CNIはCsAが6例、Tacが2例、CsAからTacへのconversionが1例であった。いずれも移植後生検時まで継続的してCNIが投与されており、その期間は127±32(89-172)か月であった。また生検時点での血清Crは、1.9±0.9mg/dl(0.9-3.3mg/dl)であった。
【 結果・考察 】
生検の組織像は、いずれも種々の程度の糸球体の硬化閉塞、細動脈壁の肥厚、間質の繊維化、尿細管密度の低下を認めた。原疾患の再発を疑われるものもあったが、糖尿病性の変化は比較的軽度であった。CNIによる変化としては細動脈中膜の肥厚など慢性血管毒性が目立った。CNI長期投与による腎毒性回避のため、導入期の抗体製剤の投与や他の新たな併用薬使用による、CNIの減量や中止を考慮するが必要があると考えられた。


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