生体腎移植後早期に急性拒絶を発症した際に抗HLA抗体が検出された1例

北海道大学 腎泌尿器外科
* 三浦 正義、小野 武紀、豊田  裕、森田  研、渡井 至彦
野々村 克也

 症例は30歳女性。原疾患不明で血液透析導入後3か月に母をドナーとして生体腎移植を施行した。HLAはA2、B55、DR8のone haplotypeミスマッチであった。術前のCDCクロスマッチは陰性、Flow T cellクロスマッチも陰性であった。導入免疫抑制療法はsteroid avoidance法(タクロリムス、MMF、バシリキシマブに加え、メチルプレドニゾロンはday2で終了)とした。Day3にはsCr1.6に低下して移植腎機能は良好に見えたが、day5にCr1.9に上昇し、かつドップラーエコーにて葉間動脈の拡張期血流が消失したため、すぐに移植腎生検を施行した。
 生検結果:間質に多彩な細胞浸潤を認めるが尿細管炎は少数散見されるのみでt1, 糸球体にはリンパ球浸潤と若干の多核球浸潤を認めg2相当であった。一部のPTCには内皮炎を考える所見を認めた。C4d免疫蛍光染色は陰性であった。
 以上より、定義上はborderline changeであるが、糸球体炎や内皮炎を認め、移植後早期であることからメチルプレドニゾロンパルスとデオキシスパーガリンによる抗拒絶療法、ステロイド維持投与(32mgより減量)を開始した。翌日よりドップラーエコー上血流の改善とday8よりsCrの改善を認めた。
 早期の急性拒絶で血管の変化も認めたため、液性因子の検索のため、flowPRAを施行して抗HLA抗体を検索した。術前の血清にてドナーに対して特異性ないもののHLA classIに対する抗体を複数有することが判明した(B49,A25,A30,B57,B52,B38)。Day5の血清では前記に加え抗A2抗体が出現しておりドナーHLAに特異的な抗体が新たに検出された。このため、術後3週現在液性拒絶に警戒して慎重にfollowしている。


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