バシリキシマブは尿細管周囲への細胞浸潤を減少させている

新潟大学大学院 医歯学総合研究科 内部環境医学講座 腎・膠原病研究部門
* 井口 清太郎、上野 光博、今井 直史、深瀬 幸子、森  穂波
Bassam Alchi、下条 文武
新潟大学 医歯学総合病院 血液浄化部
西  慎一

 バシリキシマブ導入後、拒絶反応はその頻度、程度ともに減少してきている。さらに拒絶を起こした症例では同じborder lineでもバシリキシマブ使用群では非使用群に比し、尿細管周囲への細胞浸潤がより少ないように観察される。そこで我々はバシリキシマブ使用群、 非使用群間で病理所見についての差異を検討した。症例は当科でバシリキシマブ使用、または非使用で移植約1カ月後に腎生検を行い、Banff分類でborder line、またはgarde1 と判断された症例を用いた(バシリキシマブ使用群n=4、非使用群n=4)。腎生検時の血清 Cre、BUNには差を認めなかった。尿細管周囲の細胞浸潤はPAM染色標本を用いて定量 化した。その結果、バシリキシマブ使用群では非使用群に比し有意に細胞浸潤が少なかっ た(p<0.01)。また尿細管周囲の間質面積も比較したところ、細胞浸潤数と同様 にバシリキシマブ使用群において間質面積の拡大が少なかった。一方、動静脈周囲の細胞 浸潤は変化がないかあるいはむしろ増強しているようであった。バシリキシマブは尿細管 周囲の細胞性拒絶を抑制するが、血管周囲の拒絶反応を抑制できない可能性がある。

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