ABO不適合移植症例にみるC4dの陽性例の臨床経過および光顕像との対比

市立札幌病院 病理科
* 小川 弥生、佐藤 英俊、高田 明生、田中  敏
同 腎移植科
原田  浩、平野 哲夫

【背景と目的】
 ABO不適合移植術は、高頻度で液性拒絶をきたし、治療のタイミングによっては腎機能廃絶にいたる。C4d染色は腎生検組織間質でのPTCへの免疫複合体の形成を鋭敏に示し、液性拒絶の判定に役立つ。しかしC4d陽性でも光顕所見に乏しい症例はその意義ついては議論されるところである。今回われわれは、2003年6月から2004年4月までの移植腎プロトコール生検およびエピソード生検が行われたABO不適合移植術症例において臨床経過および組織所見を検討した。
【対象と方法】
 2003年6月から2004年4月までの移植腎生検組織188件のうちABO不適合移植症例9例32生検において、臨床経過、抗ドナー抗体価の推移、エピソード腎生検および移植4W以降のプロトコール腎生検におけるC4dの沈着輝度の推移と光顕所見の推移を検討した。C4dは瀰慢性にPTCに沈着するものを陽性とし、部分的に沈着するもの、ごくわずかに沈着するものを偽陽性とした。陽性例は蛍光顕微鏡下で沈着輝度により1+、2+、3+とした。
【結果】  一時間生検で、光顕上異常所見あるいはC4dの陽性像を認めたものは1例もなかった。4週未満の腎生検は、5例行われた(うちエピソード腎生検4例)。5例のうち1例はantibody-mediated rejection、2例は間質に炎症像は乏しいものの、糸球体毛細血管内にフィブリン血栓を認める症例が1例(症例1)、糸球体係蹄内の好中球が目立つ症例が1例(症例2)で、いずれもantibody-mediated rejectionを疑い血漿交換などの治療を行った。これら3例はC4dがPTCに2+以上の陽性像を認めた(症例3)。その他1例はtubulotoxicity、1例は特異的な変化を認めなかった。これら2例はC4dがPTCに1+の陽性像を示した。
【考察】  ABO不適合移植術のエピソード腎生検では、沈着輝度は異なるもののC4dの陽性像をみる。臨床的に発熱や血清クレアチニンの上昇などの症状があり、C4dの蛍光輝度の高いものは光顕的に軽微ながら異常所見を伴い、軽度の抗体関連の拒絶反応の存在が考えられる。


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