BKV腎症と診断された腎移植患者における移植腎生検の継時的検討

東邦大学医学部 腎臓学教室
* 板橋 淑裕、酒井  謙、河村  毅、兵頭 洋二、村松 真樹
新井 兼司、相川  厚、水入 苑生、小原 武博、長谷川 昭
東邦大学医学部付属大森病院 病院病理研究室
長谷川 千花子
東邦大学医学部 病理学第二講座
石川 由起雄

 症例は45歳女性。IgA腎症による慢性腎不全のため、平成12年3月2日に血液透析を導入した。平成13年4月5日、ABO不適合腎移植術を施行し、免疫抑制剤はタクロリムス・アザチオプリン・メチルプレドニゾロンの三剤を併用した。術後38病日、SCr1.04mg/dlで退院した。術後117病日、SCr上昇のため生検施行、borderline changes以下であったが、デオキシスパーガリンを7日間施行した。術後155病日、アザチオプリンをミコフェノール酸モフェチルに変更した。以後、SCr1.19〜1.62mg/dlで推移した。一年目生検ではborderline changesのためデオキシスパーガリンを14日間施行した。その後、徐々にSCrが2.60mg/dlまで上昇したため、術後665病日より、ステロイドパルス・デオキシスパーガリンを14日間施行したがSCrの改善を認めなかった。この時の生検組織はARIa、CRIIであったが、その後の検索で尿細管上皮にスリガラス状の核内封入体を認め、電顕で同上皮核にウイルス粒子の格子状配列を認めた。免疫染色はCMV陰性、SV40TAg陽性。尿細胞診にてdecoy cell陽性、血清PCR法にてBKVが検出された。retrospectiveに術後117病日、一年目移植腎生検を再検討したところ、尿細管上皮に明らかな封入体細胞は認めなかったが、免疫染色にてSV40TAg陽性細胞を認めた。Polyomavirusによる間質腎炎の診断は拒絶反応との鑑別が難しく、その発症の早期診断も確立されていないのが現状である。
本症例は腎生検のserialな検討により、その発症時期と発症要因を検討する上で、興味深い一例と考える。

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