生体腎移植後に抗GBM抗体関連腎炎の発症が疑われたAlport症候群の1例

いわき泌尿器科
* 清水 朋一、川口  洋、常盤 峻士
東京女子医大 泌尿器科
田邊 一成、石田 英樹、東間  紘
新潟大学医学部 泌尿器科
齋藤 和英、高橋 公太
東京慈恵医大柏病院 病理
山口  裕

 症例は20歳男性。原疾患はAlport症候群である。平成13年9月10日、父親をドナーとした生体腎移植術を施行した。移植後移植腎機能良好であった。21日目にs-Cr 2.01mg/dLと著しく上昇したため、ステロイドパルス療法開始し、23日目に移植腎生検施行した。移植腎生検では、Necrotizing exudative glomerulonephritis, moderateと診断し、急性拒絶反応の診断の他、抗GBM抗体関連腎炎も疑われた。血中C-ANCA・P-ANCAおよび血中抗GBM抗体は陰性であった。OKT3投与後、30日目に施行した2回目の移植腎生検では、Focal exudative glomerulonephitisと診断した。またAcute humoral rejectionと診断し、ステロイドパルス療法と4回の血漿交換を施行した。またミゾリビンを中止しエンドキサンを開始した。s-Crは一旦 下降したがその後再上昇したためステロイドパルス療法1回施行したのち、51日目に3回目の移植腎生検施行した。移植腎生検で、Acute humoral and cellular rejectionと診断した。エンドキサンをMMF(mycophenolate mofetil)へ変更するとともに、ステロイドパルス療法と7回の血漿交換を施行した。s-Crは1.9〜2.0mg/dLとやや高値で安定していた。79日目に施行した4回目の移植腎生検では、Acute humoral rejectionの持続と診断し、更に糸球体毛細血管内への単核球・多核球の浸潤、免疫組織染色でのIgGのlinear patternより抗GBM抗体関連腎炎も示唆された。94日目に、s-Cr 2.41mg/dLと再上昇したため、ステロイドパルス療法を施行しデオキシスパーガリン 5日間投与し、更に血漿交換5回施行した。その後移植腎機能は改善し、s-Cr 1.5mg/dLであった。平成14年4月25日の採血で血中抗GBM抗体は軽度ではあるが陽性となった。s-Cr 1.7mg/dLで蛋白尿は1+で尿潜血も1+であった。その後、徐々にs-Crは上昇し、現在s-Cr1.9〜2.0mg/dLではあるが、平成15年4月17日の採血では血中抗GBM抗体は陰性であった。蛋白尿は2+で尿潜血も2+である。
 今回、再度移植腎生検予定であるが、その結果も合わせて移植後抗GBM抗体関連腎炎の発症か否かを検討してみる。

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