尿細管障害が持続した献腎移植の一例

長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 腎泌尿器病態学
* 錦戸 雅春、大庭 康司郎、野口  満、古賀 成彦、金武  洋
同 病態病理学
田口  尚、劉  殿閣、Ariffa Nazneen
同 医学部附属病院 腎疾患治療部
原田 孝司
国立病院長崎医療センター 泌尿器科
渡辺 淳一、松屋 福蔵、林  幹男

 症例は52歳男性、1981年慢性腎不全にて血液透析導入、2002年8月献腎移植施行された。ドナーは66才女性、死因はくも膜下出血、WIT10分、TIT24時間31分、潅流良好であった。
免疫抑制剤はBasiliximab FK506 MMF MP ALGで導入した。1hr生検では比較的強い尿細管障害の所見だった。 19日目に透析離脱、35日目に尿路感染と思われる発熱が出現、46日目に微熱、u-FDP上昇のため2回目生検、所見は急性拒絶反応なく尿細管上皮の変性、脱落などの尿細管障害の持続であった。FK506減量で経過観察したが(s-Cr 4.2mg/dl )、69日目にs-Cr上昇、u-FDP上昇のためMPパルス療法施行するもs-Cr上昇改善せず74日目3回目の生検施行、急性拒絶反応はなく、前回同様尿細管障害の持続と診断された。FK506を更に減量し、101日目に中止したがs-Cr下降なく115日目に高熱出現、移植腎の腫脹もあり、3度目の移植腎生検を施行した。結果は尿細管障害に加えてBanff分類のborder line(t1,i1,g0,v0)の所見でMPパルス療法しすぐに拒絶腎の所見は改善したがs-Crは低下せず119日目に透析再導入(s-Cr 8.3mg/dl)、137日目に再度透析離脱した。その後2回の発熱で一度MPパルスを施行、160日目にはアンチゲネミア陽性となりデノシンを投与した。その後尿量は3000ml以上に改善するも s-Crは経過を通じて5-6mg/dlの状態で233日目に退院となった。この症例の尿細管障害持続、移植腎機能回復遷延の原因を対側腎の移植後の経過、病理所見も含めて比較検討した。

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