腎移植症例における逆流性腎症合併に関する臨床病理学的検討

長崎大学医学部 泌尿器科
* 大庭 康司郎、松尾  学、野口  満、錦戸 雅春、古賀 成彦
金武  洋
腎疾患治療部
原田 孝司
第二病理
田口  尚

【目的】 移植腎の長期生着例における腎機能障害の原因としては、拒絶反応、薬剤性障害、あるいは腎炎の再発や発症などがあげられている。感染も関与すると考えられるが、病態が多彩であることなどより、十分な検討がなされていない。我々は膿尿を呈する腎移植患者の検討を行い、そのうちの約半数にVURが存在することを見い出し報告した。この点を踏まえ、腎移植症例での逆流性腎症への進展の可能性について、膿尿症例の移植腎組織像を検討した。
【対象】 当院で行われた腎移植で経過観察症例のうち、年2回以上の膿尿を呈し、排尿時膀胱造影を行った症例を選出した。VURの有無を確認し得た症例は9例で、VUR(+)群は5例、VUR(-)群は4例であり、両群の腎組織像を比較検討した。
【結果】 尿細管の拡張は症例によりばらつきが大きい。尿細管硝子円柱の出現は、VUR(+)群で目立つ傾向にあった。また、巣状の間質線維化を伴う硝子化糸球体の出現はVUR(+)群で多く見られた。反復生検毎に、間質線維化、尿細管円柱あるいは糸球体硝子化が強くなり、最後には慢性腎盂腎炎の特徴像を示す症例が含まれ、逆流性腎症の経過を辿ったものと考えられた。
【考案】 逆流性腎症が長期生着例の予後観察上重要な合併症のひとつである可能性が考えられ、泌尿器科学的検索を行った症例の蓄積と病理組織学的検討が望まれる。

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