移植腎生検にて感染が証明されたpolyomavirus感染症献腎移植の一例

国立病院岡山医療センター 内科
* 太田 康介
外科
田中 信一郎、石堂 展宏
臨床検査科
山鳥 一郎
吉永町立病院 外科
藤岡 正浩
国立佐倉病院 臨床検査科
城謙  輔

 今回われわれは献腎移植患者で移植腎のpolyomavirus感染症が腎生検組織にて確認された一例を経験したので報告する。症例は49歳女性。第2子妊娠中に妊娠中毒症を合併しその後ネフローゼ症候群から慢性腎不全となり32歳のとき血液透析導入した。平成12年4月当院にて右腸骨窩に献腎移植を受けた。その後当院外科外来にて加療(タクロリムス、セルセプト、メチルプレドニゾロン)を受けていた。平成13年春は血清Crが1mg/dl台であったが8月には2mg/dl台に上昇した。10月には3mg/dl台に上昇したため当院入院、施行した移植腎生検で間質への単核球浸潤を認めたため急性拒絶反応と診断した。塩酸グスペリムス、メチルプレドニゾロンなどで治療し、さらにタクロリムスをシクロスポリンへ変更し、入院中Crは4mg/dl前後で横ばいになった。しかし退院後の12月頃から再びCrが5mg/dl台へ上昇したため12月12日当院外科再入院となった。入院時u-pro(-), u-OB(-), 尿沈渣:赤血球と上皮細胞少量、BUN 85、Cr 5.71、T.Chol 277、TP 6.7、Alb 4.5、CRP 0.5。尿細胞診で封入体を持った上皮細胞が観察されvirus感染が疑われた。移植腎生検にて核内封入体を持つ尿細管上皮細胞を認め、免疫染色にてpolyomavirus(SV40)陽性であったことよりpolyomavirus感染症と診断した。治療は免疫抑制剤の減量(シクロスポリン200mg継続、セルセプト中止、メチルプレドニゾロン8mgに半減)するとともにガンシクロビル250mg/日を9日、次いでCMV高力価γグロブリンを投与した。また合併していた甲状腺機能亢進症も加療した。これらの加療にて、尿中封入体細胞は継続して観察されたが、入院中7mg/dl台後半まで上昇した血清Crはその後6mg/dl前後に落ち着き1月末退院となった。現在外来加療中である。polyomavirus感染症は移植腎において注意すべき合併症であるが早期の診断が容易でなく、今後わが国においても急増する可能性があり、その発症、治療法、予後について文献的考察を加えて報告する。


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