Peritubular capillaryへのC4d沈着を認めたHumoral rejectionの一例

東京女子医大 泌尿器科
* 清水 朋一、田辺 一成、徳本 直彦、新村 浩明、古賀 祥嗣
石川 暢夫、石田 英樹、東間  紘
いわき泌尿器科
川口  洋、常盤 峻士
東京慈恵医大柏病院 病理
山口  裕

 症例は61歳女性。原疾患はIgA nephropaty。平成13年2月13日、夫をドナーとしたA型Rh+からAB型Rh+へのABO不一致生体腎移植術を施行した。免疫抑制はtacrolimus(Tac)、methylprednisolone(MP)、mycophenolate mofetil(MMF)、antilymphocyte globulin(ALG)の4剤併用とした。移植後より移植腎機能良好にて、s-Crは1.1mg/dLまで下降した。移植後9日目にs-Crが1.5mg/dLまで上昇し、尿量減少したため移植腎生検を施行した。病理組織学的に1.Peritubular capillaritis, moderate, with focal interstitial hemorrhage, mild. 2.Transplant glomerulitis, moderate to severe.とHumoral rejectionの像であった。またPeritubular capillaryへのC4d沈着を認めた。移植後11日目にs-Crが2.2mg/dLまで上昇し、更に移植前に陰性であった抗ドナー抗体が陽性化していた。OKT3の投与と10回の血漿交換により、一時s-Crが4.6mg/dLまで上昇したがその後s-Crは1.6mg/dLまで下降した。移植後23日目施行の移植腎生検では、病理組織学的に1.Band-like and striped interstitial fibrosis with tubular atrophy, mild. 2.Transplant glomerulitis/glomerulopathy, moderate, with FGS-like change.でPeritubular capillaryへのC4d沈着をまだ認めた。ステロイドパルス療法と更に3回の血漿交換を施行した。その後の移植後31日目の移植腎生検では、病理組織学的にTransplant glomerulitis, moderate.であったがPeritubular capillaryへのC4d沈着は認めなかった。現在s-Cr1.1mg/dLと移植腎機能は良好である。
 本症例は、Peritubular capillaryへのC4d沈着を認めたHumoral rejectionの症例で、血漿交換などの治療により移植腎機能の改善が認められ、またPeritubular capillaryへのC4d沈着の消失を認めた例であった。
本症例をもとにHumoral rejectionの診断と治療について検討する。

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