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今回我々は腎移植症例について移植後早期(100日未満)、移植後1年目(200〜500日)のプロトコール生検組織の評価を行った。
早期生検群は22症例、移植後10〜92日、mean±SD 48.9±24.2日。acute rejection (AR)の既往ある症例が10例、無いものが12例である。
AR既往例では7例にrejectionの所見が認められた。その内訳はborderline AR5例、tubulointerstitial AR1例、vascular rejection1例であった。ARの既往無い症例では9例にrejectionは認められず、残り3例はborderline AR2例、tubulointerstitial AR1例であった。AR既往例は既往の無い例に比してより高率に、かつ重篤なrejection出現例が観察された。更に、AR既往無い7例、既往ある5例にtoxic tubulopathyが認められた。薬剤性の細動脈硝子化はAR既往無い1例、既往ある1例で観察された。
1年目生検群は15症例15回 、移植後202〜470日 、mean±SD 351.4±77.7日、ARの既往ある症例は8例、無い症例は6例、不明1例である。
1年目生検ではAR既往ある8例中5例 、既往無い6例中1例にARの所見が認められた。また、1年目生検でCRと診断された4例は、全例ARの既往ある症例であった。AR既往無い症例では6例中2例に縞状の間質線維化を合併し、免疫抑制剤による慢性腎障害が考えられた。以上、AR既往例では血清クレアチニンが安定した時期にても組織学的にrejectionの遷延が見られた。AR既往はsubclinicalな移植腎傷害が進行するハイリスク因子であると考えられた。更にAR既往無い例でも2〜3割にsubclinical rejectionが認められ、1年目生検では薬剤性慢性腎障害も少数観察された。これらも慢性移植腎機能障害に関与する因子と思われた。
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