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症例は47歳男性。1988年、父親をドナーとし生体腎移植をうけるが、1994年慢性拒絶反応により機能喪失となる。1999.1月、献腎による二次移植を施行される。術後、免疫抑制剤として タクロリムス(FK506), アザチオプリン(AZT), プレドニン, 抗リンパ球グロブリン(ALG)を使用し、尿量が安定するまでデオキシスパガリン(DSG)も併用した。術後11日目で血液透析から離脱し、術後15日目の血清Cr5.1mg/dlの時点で腎生検を行った(生検1)。 その結果、尿細管炎などの明らかな急性拒絶反応や空胞変性などの薬剤の毒性は認めず、術後22日目血清Cr2.1mg/dlにて退院となった。退院後、血清Cr値が徐々に上昇し、術後90日目に2.8mg/dlとなったため再入院。腎生検を再度施行した(生検2)。 組織上、急性拒絶反応の所見は認めず、一部に空胞変性を認めるのみであった。血清Crの上昇は主にFK506の腎毒性によるものと考え、FK506の10mg/dayから6mg/dayへの大幅な減量を行なった。同時に、若干の拒絶反応の可能性も考慮し、ステロイドパルス療法、DSG投与も併用した。血清Crの上昇はその後も続き、術後150日目で透析再導入となった。透析再導入に際し、FK506を中止とした。透析開始後、血清Crの改善を認め、約20日間で透析離脱となった。術後240日目に、腎機能回復の病態把握のため腎生検を施行した(生検3)。 腎機能低下、回復を説明できる明確な所見は認めず。間質への細胞浸潤を認めるのみであった。拒絶反応の再燃を考慮しAZを増量し、少量のFK506を再開をした。血清Cr1.5mg/dl と安定していたが、術後330日目に、治療効果およびFK506の影響を調べるため腎生検を施行した(生検4)。間質への細胞浸潤を認めたが、他の所見は認めなかった。 以上、臨床経過から判断すると、今回の腎機能低下はタクロリムスによる可能性が考えられる。タクロリムスの腎毒性について検討すべき症例として提示させていただきたい。 |