定期腎生検によりSLEの組織学的再発を確認した生体腎移植の一例

東邦大学 医学部 腎臓学教室、総合太田病院 泌尿器科*
* 酒井  謙、宮城 盛淳、進藤 雅仁、中野 浩之、波多野 智巳
相川  厚、水入 苑生、小原 武博、長谷川 昭、中西  努

新井 兼司
、平山 順朗

 症例31歳女性、1988年(19歳時)にSLE(発熱、蝶形紅斑、関節痛、光線過敏症、脱毛、lupus anticoagulant陽性、選択的IgM減少症)を発症した。その後PSL, Azathioprineにてmajor symptomなく経過し、90年にはPSLを中止した。その後93年4月より発熱、肉眼的血尿、浮腫が出現。血漿交換やステロイドパルス治療にも抵抗しネフローゼ症候群を呈しながら急速に腎機能が悪化した。このときCNS lupusも合併して結局5月に透析導入をした。
 その後96年3月に血液型非適合生体腎移植を施行した。術後経過は良好で、腎機能はCyA, mPSL,azathioprineにてCr0.6mg/dl前後で安定していたが、同年8月より定性で(+)程度の蛋白尿が出現した。その後の定期的腎生検は97年1月、99年1月に行っているが、99年1月の腎生検では尿細管、間質にむしろ細胞浸潤や尿細管炎は目立たず、focal segmentalにmesangium細胞および基質の増生がみられ、一部に癒着を認めた。IFではIgGがcapillaryに陽性、C3C4がmesangial,capillaryに陽性であり、さらに電顕上係蹄壁の肥厚、基底膜およびparamesangium領域にdepositがみられた。以上のことよりlupus腎炎class・の再発腎炎と診断した。現在までSLEは血清学的にも臨床的にも活動性
なく腎機能も安定しているが、一日1g以内の蛋白尿が持続しており、本年より顕微鏡的血尿も出現している。
 本症例はserological negativeのlupus腎炎の再発と考えられ、lupus腎炎の自然歴が定期腎生検で得られた点で重要である。移植前の活動性と再発との関連、定期腎生検における再発時期と今後の進展防止等の議論が必要と思われた。

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