良好な移植腎機能を示す生検標本の病理組織学的検討

鳥取大学 医学部 第一病理
* 庄盛 浩平、倉立  至、坂谷 貴史、井藤 久雄
市立宇和島病院 泌尿器科
竹内  賢、鄭  會久、万波  誠
愛媛大学 医学部 泌尿器科
俊野 昭彦、岡  明博、大岡 啓二

【目的】  移植腎には多様な病態が生じ、それが機能異常として臨床的に反映される。しかし、移植腎機能あるいは臨床診断と生検標本の病理組織所見が一致しない症例もある。本研究の目的は、生検時に比較的、良好な機能を保った症例の組織所見を検討し、プロトコール生検の意義と臨床的にサイレントな拒絶反応との関連を解明することである。
【症例と方法】
 1992年9月から99年4月までに、総計634件の移植腎生検標本が中四国の10移植施設から鳥取大学医学部病理学第一講座に送られ、診断された。この内、6件では腎機能等の臨床情報が不十分であり、また、24件では標本内に5個以上の糸球体が含まれていなかったため対象から除外した。生検時、尿量1,500ml/日以上、血清クレアチニン(Cr)値1.4mg/dl以下であった検体を抽出し、組織学的検索を行った。拒絶反応の程度はBanff分類に従った。
【結果】  604検体中139検体(23%)が上記の基準を満たした。生検適応についてみると、プロトコール生検(退院前69検体、その他4検体)が最も多く、次いで、Cr値軽度上昇32検体、蛋白尿20検体、パルス療法後13検体、発熱1検体であった。この内、組織学的に動脈硬化を除く変化のなかった検体は退院前生検群で47検体(68%)、Cr値上昇群で6検体(19%)、蛋白尿群で1検体(5%)、パルス療法後群で5検体(38%)であった。他方、境界領域変化を含む急性拒絶反応は各々、19検体(28%)、18検体(56%)、0検体、8検体(62%)であった。なお、蛋白尿群の生検時期と組織診断は多彩であり、一定の傾向はなかった。
【結語】  移植腎機能が良好であっても、組織学的には多様な変化が生じている症例があり、退院前を含むプロトコール生検の重要性が示された。

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