移植腎病理AIシステムの妥当性:病理医による診断との比較検討
Validity of automatic diagnosis system for transplant kidney pathology: Comparison with diagnosis by pathologist

東京女子医科大学医学部 移植管理科
* 松下 純、清水 朋一、石田 英樹
東京女子医科大学医学部 泌尿器科
平井 敏仁、高木 敏男
関西医科大学医学部 泌尿器科
矢西 正明、木下 秀文

【背景】腎移植医療において拒絶反応の病理学的評価は重要であり、1991年以降、Banff分類が国際的な移植腎病理診断のゴールドスタンダードとなっている。しかし、時代の経過や様々なルールやデータの統合により、Banff分類は複雑になり、診断が容易ではなくなってきている。病理診断の標準化のため、2022年Banff会議でBanff scoreから自動的に病理診断を行うAIが公表された。今回、当院病理データベースを用いて、AI診断システムによる診断能力を評価した。
【対象・方法】2017年1月から2022年7月に東京女子医科大学泌尿器科で行った544例の腎移植レシピエントにて採取された0hr以外の移植腎生検1017件に対して、AI診断システムと病理医による診断の急性または慢性の抗体型拒絶反応(ABMR)診断の一致率を評価した。また、AIおよび病理医それぞれにより診断されたABMR症例の、患者ごとの生着期間を比較した。
【結果】病理医が診断したABMRは97件であり、AIが診断したABMRは95件であった。病理診断とAI診断が一致したのは93件で、一致率は85.6%であった。また、病理医のみABMRと診断したのは14件で、AIのみの診断は12件と、両群に乖離が見られた。AIと病理医、それぞれ患者ごとにおける生着期間に、明らかな差は見られなかった。
【結論】多くの症例で、AIと病理医の診断は一致しており、このシステムは、移植腎拒絶を診断するのに役立つ可能性がある。このシステムがBanffの改定ごとに更新されれば、レトロスペクティブの研究において、病理診断を再評価することが有用かもしれない。

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