1時間生検における腎病理学的TMAの臨床病理学的検討
A Clinicopathological Study of Renal Pathological TMA in One-hour Biopsies

日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院 腎臓内科
* 井口 大旗、根岸 圭、小林 アズサ、田中 まりえ、新城 響、齋藤 尚二
特定医療法人 秀済会 増子記念病院
武田 朝美

【背景】移植後早期の血栓性微小血管症(TMA)は、移植片の生存率だけでなく生命予後をも悪化させる最も重大な合併症の一つである。移植後1時間生検では組織還流直後の評価が可能であり、しばしば移植後早期のTMA病変を捉えることができる。腎移植後TMAに関しては、その臨床的意義や予後の報告が散見されるが、1時間生検においての病理学的TMAの原因や臨床的意義は定かでない。
【方法】2011年1月〜2024年3月に当院で腎移植を施行された成人患者のうち、1時間生検の腎組織でTMAを認めた症例について、その背景、臨床経過と病理所見を検討した。
【結果】1時間生検での腎病理学的TMAは16症例にみられ、移植背景はそれぞれABO血液型不適合7例、ABO血液型適合5例、献腎4例であった。血液型不適合の6例のうち5例で症候性TMAのとなり、そのうち一例は高抗体価であり、移植早期からステロイドパルスや血漿交換を施行したが反応みられず移植腎損失した。また残りの血液型不適合の症例のうち、2例はステロイドパルスと血漿交換後に腎機能改善がみられ、3例は血漿交換に反応乏しく、エクリズマブを使用した。エクリズマブを使用した3例全てで遺伝子検査を行い、1例でCFB遺伝子変異を認めた。血液型適合移植の中でDSA陽性であった1例は移植翌日から腎機能障害や血小板減少がみられ、ABMRの診断で治療介入した。血液型不適合移植の1例、適合移植1例は移植早期から血小板減少を認めたが、移植腎機能は保たれており、治療介入なく改善した。その他の血液型適合移植3例と献腎移植4例では症候性TMAはみられなかった。病理的見地では、生体腎移植例においてBanff分類g2以上の全例で症候性TMAとなり、追加の免疫抑制療法を要した。一方で献腎移植ではg2以上を示す症例においても追加の免疫抑制は要さなかった。C4dはABO血液型不適合症例とDSA陽性例でPTCに弱陽性であった。
【考察】一時間生検により移植直後のTMAの診断が可能である。1時間生検での病理学的TMA症例では特にABO血液型不適合移植やDSA陽性例など既存抗体が症候性のTMAと関連している可能性がある。既報との比較を含め、文献的考察を加えて報告する。

スライド

戻 る  ページの先頭