移植腎CNI血管毒性の臨床病理学的検討
Clinical and pathological analysis for CNI vascular toxicity in kidney allograft

昭和大学 顕微解剖学講座 顕微解剖学部門
* 下川 麻由、康 徳東、川西 邦夫、河西 恵州、高木 孝士、本田 一穂
昭和大学 電子顕微鏡室
高木 孝士
昭和大学病院 腎移植センター
加藤 容二郎、吉武 理
昭和大学藤が丘病院 内科系診療センター 内科(腎臓)
下川 麻由、小岩 文彦

【背景】移植腎においてCNI血管毒性はグラフトの長期生着を妨げる要因の一つであるが、その機序やリスク因子についてはわかっていない。
【目的】移植腎CNI血管毒性の病理学的特徴とグラフトの予後に関連する臨床病理学的因子を明らかにする。
【方法】昭和大学病院腎移植センターで2016年1月から2023年6月までに移植腎生検を施行した263症例のうち、腎移植後5年経過した32症例・38生検(移植後期間133.5±64.9ヶ月)を対象症例とした。臨床所見とBanff分類スコア、ABMRの合併、FSGS病変の有無、細動脈の血管平滑筋細胞の変性と消失などを評価・解析した。生検後の観察期間は平均126.9±63.6ヶ月でグラフトロス群は9例、機能群は23例であった。
【結果】aahスコアの内訳はaah0: 5例、aah1: 5例、aah2: 13例、aah3: 9例であった。透析再導入までの期間はaah0と1で再導入なし、aah2で49.8±9.6ヶ月(n=6)、aah3で23.5±10.8ヶ月(n=5)であった。aahスコアと関連する因子は、臨床因子では移植後期間(p=0.040)、病理因子ではptcbm(p=0.010)、血管平滑筋細胞の消失(p=0.001)であった。しかしptcbmは移植後期間に交絡していた。FSGS病変の出現率も関連する傾向にあったが、有意差はなかった(p=0.1240)。グラフト機能不全のリスク解析ではc(i オッズ比6.01, 95%CI:1.45-24.9, p=0.013)、c(t オッズ比5.30, 95%CI: 1.10-25.5, p=0.014)、aah(オッズ比3.21, 95%CI: 1.03-10.0, p=0.045)が有意な危険因子であった。臨床因子では有意なリスク因子はなかった。
【結語】移植後5年以上の生検病理因子ではci, ctに加えて、aahがグラフト機能不全のリスク因子となる。AMRのスコアであるptcbmはaahと相関したが、移植後期間の交絡因子であった。血管平滑筋細胞の消失はaahに関連する現象であり、今後の検討が必要である。

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