|
【症例】50歳男性
【現病歴】36歳時に2型糖尿病を指摘され加療開始した。43歳時より当院で加療を継続したが、徐々に蛋白尿が悪化しネフローゼ症候群となった。45歳時に腎生検を施行し、糖尿病性腎症(結節型)の診断となった。外来加療を継続するも徐々に腎機能が悪化し、49歳時に腹膜透析導入、今回妻をドナーとするABO不適合生体腎移植を実施した(HLA 5 locus mismatch、ダイレクトクロスマッチ陰性)。ドナー(妻)は尿路感染症の既往があるも、腎機能・尿所見を含め術前のスクリーニングで特記すべき異常を認めず、T-SPOTも陰性であった。ドナーは移植前の尿培養でStaphylococcus aureus、Streptococcus agalactiaeが検出されたが菌量は共に103 CFU/mL以下と少量であった。腎移植3日目に、腎エコーで拡張期の血流途絶があり、MAG3で高度排泄遅延を認めたことから、臨床的に急性抗体関連型拒絶反応が疑われ、移植5日目に移植腎生検を施行した。
【移植腎病理所見】糸球体炎と好中球浸潤を伴うびまん性の傍尿細管毛細血管炎とともに、皮質の一か所に限局して大型の非乾酪性類上皮肉芽腫を認め、近傍に好中球や好酸球の浸潤を伴う高度尿細管炎を認めた。尿細管上皮にウィルス感染を疑う所見はみられず、組織学的に細菌、抗酸菌、真菌を疑う感染微生物は同定されなかった。以上より急性抗体介入型拒絶反応と肉芽腫性尿細管間質性腎炎の合併と診断した(Banff 2019: t0, i2, g1, v0, ct0, ci0, cg0, cv0, ptc2, C4d2, iIFTA0, tIFTA0, ti2, pvl0)。
【臨床経過】ステロイドパルス療法、血漿交換、免疫グロブリン静注療法を含む加療を行い、移植腎機能はsCr 0.9 mg/dL程度で安定した。移植5か月後の移植腎生検では、急性抗体関連型拒絶反応と肉芽腫の所見はどちらも消失した。
【考察】肉芽腫の形成機序に関して、de novoとドナーからの持ち込みの2つが考慮されうる。de novoであれば感染性や薬剤性ならびに拒絶反応に起因する可能性が考えられた。肉芽腫が持ち込み病変である可能性として、ドナーに尿路感染症の既往があり、移植前の尿培養で菌量が少ないながらもグラム陽性球菌が検出された点から、尿路感染に関連した病変も考慮された。腎移植後早期に移植腎に肉芽腫を認めたとする報告は少なく、本例は大変貴重な症例と考えられ、文献的考察を加えて報告する。肉芽腫の原因に関して、ご意見を伺いたい。 |