繰り返す尿路感染症にBKウイルス腎症を合併した一例
BK virus nephropathy complicated by repeated urinary tract infections: a case report

東京慈恵会医科大学附属病院 腎臓・高血圧内科
* 齊藤 弥積、山本 泉、川邊 万佑子、大木 悠太郎、林 綾香、神崎 剛、小林 賛光、松本 啓、上田 裕之、丹野 有道、坪井 伸夫、山本 裕康、横尾 隆
東京慈恵会医科大学附属病院 泌尿器科
柳澤 孝文、三木 淳、木村 高弘

 症例は75歳男性。47歳で尿蛋白とCr1.5mg/dlの腎機能障害(CKD)を指摘され、腎硬化症と診断された。71歳時に血液透析開始、74歳時に妻をドナーとするABO血液型不適合(B→O)生体腎移植を実施した。リツキシマブ+血漿交換5回で脱感作(抗B抗体価:生食法1×クームス法16×)も、術後2日目に急性抗体関連型拒絶反応を発症し、IVIG+PE 5回にてCr1.33mg/dlで安定化した。術後14日目に神経因性膀胱による尿閉に尿路感染症(UTI)が合併し、抗生剤加療で改善した。タムスロシン、ベサコリン、デュタステリドによる加療も、尿閉の改善は乏しく、術後27日目にキャップ式尿道バルーンを挿入したまま退院した。その後、UTIによる入院を2度繰り返したが、術後3か月目には尿道カテーテルフリーで外来通院可能となった(Cr1.31mg/dl)。
 今回、生体腎移植後5か月目に3度目のUTIによるCKD(Cr2.4mg/dl)を認め精査加療目的にて入院となった。抗生剤加療により発熱と炎症反応は改善したが、腎機能はCr1.61mg/dlまでの改善にとどまった。精査では、免疫抑制剤の血中濃度は、TAC 4.8ng/ml、MMF AUC 0-12hr 34μg・h/mlで適正と考えられた。BKウイルス腎症(BKN)については、尿中Decoy cellsは陽性であったが、血中BKV 700copy/mlと結果が乖離していた。以上より、UTI、BKN、急性拒絶反応などを鑑別するために、エピソード生検を実施した。病理所見では、尿細管間質域の好中球優位の浸潤が目立ち、肉芽腫様変化やIntratubular granulomasが随伴し、遠位尿細管上皮の核腫大とすりガラス状変化やhaloを伴う核内封入体が確認され、SV40染色陽性細胞が2-3%に認められた。一方、動脈炎、糸球体炎、C4d沈着などの拒絶反応を疑う所見は認めなかった。以上からUTIとBKNの合併と診断し、抗生剤継続と免疫抑制剤調整にて対応した。本例は、再発性UTIとBKNを合併したまれな病態で、拒絶反応との鑑別は厳密には困難と考えられた。また、尿中Decoy cellsと血中BKNの結果が乖離していた点は興味深く、文献的考察含め報告としたい。

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