移植後判明した移植後Adenine phosphoribosyltransferase(APRT)欠損症の一例
Case with Adenine phosphoribosyltransferase (APRT) deficiency firstly diagnosed after renal transplant

福岡大学 病理学教室
* 上杉 憲子
福岡大学医学部 腎臓膠原病内科
升谷 耕介
宮崎県立病院 腎移植外科
三浦 敬史、中房 祐樹
宮崎県立病院 腎臓内科
池田 直子

 Adenine phosphoribosyltransferase(APRT)欠損症は常染色劣性を呈する遺伝性の疾患で、核酸のsalvage経路のひとつAPRTが欠損/低下し、尿に不溶性の2,8-dihydroxyadenine(DHA)が蓄積し、尿路結石や結晶性腎症を呈する疾患である。他臓器には変化がないため、見逃しも多い。今回、移植後3か月の生検で、初めて発見されたAPRT欠損症の一例で、治療後7か月経過した腎生検の結果を加味し報告する。症例は、48才男性。移植前に腎結石が指摘されていた。妻をドナーとする血液型適合腎移植を施行された。移植直後のCre 1.3mg/dlで、3か月後のCreは1.73mg/dlであった。0時間腎生検では著変はなかったが、3か月では、間質に密な細胞浸潤があり、偏光顕微鏡で多色に偏光する茶褐色のCystalが尿細管上皮内、間質の組織球に観察された。電顕では、CystalはElectron dense で、尿細管のライソゾーム内や管腔に存在した。APRT欠損症を疑い、Febuxostatが開始されたが、拒絶も否定できないため、steroid pulse療法が施行された。その後、尿メタボローム解析にて、2,8-DHA蓄積が判明し、診断が確定した。治療後1か月でcreは1.3mg/dlと低下した。1年後の移植腎生検では、Cystalや間質細胞浸潤は著明に減少したが、線維化は進行していた。APRT欠損症は移植後に発見されることも多く、治療により改善はみられても、移植腎の生着率は低いことが知られている。本例も今後の腎生検にて経過を観察が必要である。

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