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【背景】我々は、一次性巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の移植後再発例(rFSGS)において、血漿中の抗nephrin抗体が移植腎生検検体においてnephrinの局在変化をきたしたことを示し、抗nephrin抗体が移植後再発をきたす循環因子の候補であることを報告した(Hattori M, et al, Am J Transplant, 2022、Shirai Y et al, Kidney Int, 2024)。今回、抗nephrin抗体が陽性のrFSGSの1症例におけるスリット膜構成分子の経時的な発現変化を解析した。
【方法】一次性FSGSを原疾患として末期腎不全にいたり、血液型一致生体腎移植を行い、腎移植後4時間で大量の蛋白尿を呈した7歳女児の1症例を対象とした。レシピエントの血流再開1時間後(1h)の移植腎生検検体と、77g/gCrと大量の蛋白尿を呈していた腎移植後3週間の時点で採取した移植腎生検検体を用いた。nephrin、podocin、CD2APの蛍光免疫染色を行い、超解像顕微鏡(SIM)で観察した。
【結果】レシピエントの血流再開前の生検検体では、nephrinとpodocinは係蹄に発現し、CD2APはポドサイトの細胞体にびまん性に発現していた。1h検体では、nephrinはポドサイトの細胞内に局在が変化し、CD2APは発現が低下して一部で細胞体内に粗大な凝集を認めたが、podocinは発現が低下することなく係蹄に局在した。腎移植後3週間の生検検体では、nephrinとともにpodocinの発現も低下し、CD2APは1h生検と比してさらに発現が低下し、細胞体内に粗大な凝集を認めた。
【結論】生体腎移植後FSGS再発において、抗nephrin抗体が結合したnephrinは、ポドサイトの細胞体内に局在が変化し、nephrinの細胞内ドメインと結合するCD2APは抗nephrin抗体に曝露後早期から発現の低下と凝集を認めた。一方で、CD2APと同様にnephrinの細胞内ドメインと結合しているpodocinは抗nephrin抗体に曝露しても早期には局在は変化することなく、時間が経過すると発現が低下した。これらの分子の発現変化の相違は、抗nephrin抗体によるポドサイト障害の機序の解明に重要な知見となる可能性がある。 |