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症例は40歳代男性、原疾患の詳細は不明。12年4か月の血液透析の後、脳死下提供献腎移植を施行した(ABO血液型適合、A、B、DR、HLA 2ミスマッチ、交叉試験陰性、PRA陰性)。ドナーは60歳代男性で脳血管障害による脳死であった。移植前、抗サイトメガロウイルス(CMV)、EBウイルス(EBV)抗体は陰性。バシリキシマブ、シクロスポリン(CsA)、ミコフェール酸モフェチフ(MMF)、メチールプレドニゾロン(MP)で導入し、CsA, MMF, MPにて維持、移植後25日目にCsAを減量しエベロリムス(EVR)を導入した。尿路感染症(UTI)からの菌血症の発症があり、17日目に透析を離脱した。血小板(PLT)低値持続のため術後28日よりMMFを減量。30日目にCMV核酸定量(IU/ml)が1000以上となりValganciclovirの投与を開始。移植後37日目、移植腎生検を施行した(血清クレアチニン(Cre)値、1.83mg/dl)。i2.t3の所見でT細胞性急性拒絶反応と判断したが、39日目にUTIの再燃と思われる発熱があり、抗生剤を投与。感染の軽快後、46日目よりMPパルスを行った。パルス開始とほぼ同時に、尿量減少、血清Cre値の上昇を認めた。移植後52日目に移植腎生検を再検(Cre, 5.22mg/dl)。腎実質に大型主体の異形lymphoid cellが増殖、CD20陽性、EBER一部陽性でPost-transplant lymphoproliferative disorders(PTLD)、diffuse large-B cell lymphomaと診断した。移植腎機能はさらに悪化し、画像検査より病巣は移植腎に限局しているものと判断、移植後55日目から透析再導入し、58日目に移植腎摘出術を行った。摘出後4ヶ月経過した現在、リンパ腫の再発は認めていない。
本例は移植後早期に移植腎にPTLDが発症、移植腎摘出を施行した症例である。本例の病理所見の推移、臨床経過を提示したい。 |