移植腎生検組織における経時的な交感神経再生に関する臨床病理学的検討
Clinicopathological study of sympathetic nerve regeneration over time in transplanted kidney biopsy tissue

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
* 大木 悠太郎、山本 泉、林 綾香、川邊 万佑子、小林 賛光、坪井 伸夫、大城戸 一郎、山本 裕康、横尾 隆
東京慈恵会医科大学 泌尿器科
占部 文彦、三木 淳、木村 高弘

【背景】移植腎の長期生着は平均17年と依然として短く、病理学的に、尿細管萎縮/間質線維化(IF/TA)の進展が見られるが、その原因は多岐にわたる。移植腎とNativeの腎炎/腎症の違いは、免疫抑制剤の使用と、神経系やリンパ管系の外科的断裂である。近年、動物実験において、腎臓の神経系の遮断がIF/TAに抑制的に働くと報告された。
しかし、移植腎における外科的除神経後の再生性変化については不明点が多い。これまでに、剖検腎を用いた検討において、腎移植後に交感神経が5ヶ月から2年で再生することが示されている。(NDT 2017)今回我々は、除神経後の交感神経の経時的変化を、プロトコル生検を用いて検討した。
【方法】当院で生体腎移植を施行され、腎移植後1年目までに、拒絶反応や感染症を発症しなかった12症例を対象とし、プロトコル生検(0hr、1hr、3ヶ月、1年、3年)を用いて、交感神経系のマーカーであるTyrosine Hydroxylase(TH)の染色プロトコルの確立および病理学的検討を行った。
【結果】TH陽性の神経束は、動脈系に沿って認められ、動脈径に比例して神経束は狭小化し、小葉間動脈レベルまで確認可能であった。0hrおよび1hrではTH染色を確認できる症例が多かった。移植腎のうち1例において、0hrで陽性で、3ヶ月後のプロトコル生検で陰性、1年目プロトコル生検で弓状動脈から小葉間動脈の外膜を中心にTH陽性所見を認める症例が確認され、交感神経の再生性変化と考えられた。
【結論】TH染色を確立し、腎移植における外科的除神経後の交感神経再生性変化を確認した。一方、皮質領域では小葉間動脈周囲にごく小さな神経束として点在するため、陽性像が得られなかった場合、再生性変化がないのかサンプリングエラーかを同定することは困難であった。移植腎における神経再生性変化とその臨床病理学的意義について今後更なる検討が望まれる。

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