CNI腎症の発症機序におけるTonEBPの関与に対する考察
Role of TonEBP for calcineurin inhibitor-induced nephrotoxicity.

JCHO仙台病院 腎臓疾患研究センター
* 眞田 覚、片野 咲、佐藤 光博

 Tonicity-responsive enhancer binding protein(TonEBP)は細胞内外の浸透圧平衡を保つ転写因子で、Naなどの高張刺激により細胞質から核へ移行し、細胞内浸透圧物質の産生調節を行うことで張度刺激からの細胞死を防ぐ。
目まぐるしく浸透圧が変化する腎臓内細胞の恒常性維持に必須であるが、カルシニューリン阻害(CNI)はTonEBPの核内移動を制限し転写活性を抑制することが知られている。我々はCNI腎症の本態がTonEBP抑制による細胞障害であると仮説を立てた。2018年よりJCHO仙台病院で移植腎生検を行った144例を対象にTonEBP免疫染色で尿細管を観察したところ、CNI腎症例は拒絶例と比して有意に細胞質優位の染色パターンを呈し、TonEBPの核内への移動が制限されていることが示された。これはBanff aahスコアや移植後年数に関わらず認められ、急性/慢性の障害を問わない。次にTonEBPの最も強い核内移行促進因子であるNaについて検討したところ、CNI腎症例の塩分摂取量は拒絶例に比して低い傾向があった。以上よりCNI腎症ではTonEBPの転写活性が抑制されていることが示唆され、この機序は塩分制限により顕在化している可能性がある。

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