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【背景と目的】移植後collapsing FSGSに関する臨床病理学的な研究は限られている。原疾患FSGSを含み、移植後のcollapsing FSGS(cFSGS)とnon-collapsing FSGS(ncFSGS)にわけて検討を行った既報では、cFSGSで急性期の炎症スコアよりも血管・尿細管間質の複合的な慢性障害スコアが高いこと・腎予後が不良であることが報告されている(Nephrol Dial Transplant 2006 21: 2607-2614)。今回原疾患FSGS症例は除いて、移植後に新たに発症するde novo cFSGSについて、その成因及び腎機能へ与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】FSGSのvariant評価はコロンビア分類に従った。3/4以上分節性硬化がみられる病変は評価対象外とした。当院の2017年1月から2022年12月に施行した移植腎生検でFSGSと診断した59検体(48症例)のうち、原疾患FSGS12検体(8症例)と評価対象外FSGS1検体(1症例)は除外して、移植後にFSGSと診断された46検体(39症例)を用いてcFSGSとncFSGSに分けて臨床病理学的解析を行った。中位動脈硬化は既存の評価方法(糖尿病性腎症と腎硬化症の病理診断への手引き 日本腎臓学会誌57(4), 649-725, 2015)である中膜/内膜比の三段階(スコア0-2)に新たにスコア3を加えて4段階評価とした: 内膜肥厚なし(スコア0)、0<かつ<1(スコア1)、1≦かつ<2(スコア2)、2≦(スコア3)、その他の組織スコアはバンフスコアを用いて評価した。グラフトサバイバルの検討では、複数回生検症例では初回にFSGSと診断された検体を使用して解析した。
【結果】FSGSの46検体中、20検体(43.5%) がcFSGS、26検体(56.5%)がncFSGS(NOS 16検体、perihylar 6検体、tip 3検体、cellular 1検体)であった。cFSGSはncFSGSに比して移植後からFSGS診断生検までの期間が有意に長く、eGFRは有意に低値、蛋白尿、動脈硬化スコア、ct・ci・aahスコアが有意に高値であった。また、cFSGS 15症例中9例、ncFSGS 24例中2例で移植腎喪失がみられ、グラフトサバイバルはcFSGSがncFSGSに比較して有意に低下した。
【結論】移植後に発症するde novo cFSGSはグラフト予後不良因子であり、de novo cFSGSの成因として、移植腎の動脈硬化、IFTA、細動脈病変などが関連している可能性が示唆された。 |