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【背景】私たちは一次性巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の移植後再発例1例において、血漿中の抗nephrin抗体がnephrinのチロシンリン酸化を介してnephrinの局在変化をきたすことを示し、抗nephrin抗体が移植後再発をきたす循環因子の候補であることを報告した(Hattori, et al. Am J Transplant 2022)。今回、症例数を増やして、移植後FSGS再発例への抗nephrin抗体の関与を検討した。
【方法】原疾患を一次性FSGSとし、腎移植後1時間(1h)生検を行い、血漿または血清の保存のある11例を対象とした。移植後再発し血漿交換を要した6例(A群)、軽度の蛋白尿を認めたが治療を要さなかった2例(B群)、蛋白尿の再発がなかった3例(C群)に分けて検討した。移植前再発予防処置として行なった血漿交換前または移植後再発中に採取した血漿または血清を用いて、ELISA法で抗nephrin抗体を測定した。また、1h生検検体を用いて、nephrinとIgGまたはリン酸化nephrinのアダプター蛋白であるSrc homology 2 domain containing A(Shc A)の二重染色を行い、超解像顕微鏡(SIM)で観察した。結果は中央値(四分位範囲)で示した。
【結果】A群の抗nephrin抗体価は1527(1088, 2312)U/mLと著明に高く、B群は621, 504 U/mLと中等度高値で、C群は141(110, 153)U/mLとコントロール(健常人13名、膜性腎症 13名、ループス腎炎 4名、遺伝性FSGS 9名)と同等であった。A群とB群では1h生検検体でnephrinの局在は変化し、nephrinと共局在するpunctateなIgGの沈着とShcAの発現増強を認めた。C群では1h検体でnephrin の局在変化、IgGの沈着、ShcAの発現増強はみられなかった。
【結論】生体腎移植後FSGS再発において、抗nephrin抗体が結合したnephrinは、リン酸化を介して局在が変化する可能性が示唆された。今後さらに症例を集積し、FSGS移植後再発に抗nephrin抗体が関与する割合を明らかにするとともに、抗nephrin抗体による蛋白尿発症の機序を解明する必要がある。 |