Accelerated acute antibody-mediated rejection加療後3か月で巣状分節性糸球体硬化症が顕在化したABO不適合腎移植の一例
A case of focal segmental glomerulosclerosis 3 months after treatment for accelerated acute antibody-mediated rejection following ABO-incompatible kidney transplantation

東京慈恵会医科大学附属病院 腎臓・高血圧内科
* 池田 拓海、山本 泉、川邊 万佑子、大木 悠太郎、林 綾香、小林 賛光、上田 裕之、大城戸 一郎、坪井 伸夫、山本 裕康、横尾 隆
東京慈恵会医科大学附属病院 泌尿器科
占部 文彦、三木 淳、木村 高弘

【症例】37歳男性。以前より高血圧に対して内服加療していた。31歳時に下腿浮腫とふらつきを契機に他院受診した際、BUN98mg/dL、sCr11.7mg/dLであり血液透析導入となった。その際腎生検が施行され、腎硬化症の診断であった。その後5年間の腹膜透析を経て、36歳時に父をドナーとするABO不適合移植(A→B)を実施した。
Rituximab+免疫グロブリン療法(IVIG)+二重膜濾過血漿交換法(DFPP)×2で導入し、抗血液型A抗体は4倍であった。術後3日目に腎エコーでRI 0.7以上(拡張期血流の低下・途絶)、MAG3シンチで腎血漿流量の低下と排泄相の遅延が見られ、急性抗体関連型拒絶反応(ABMR)の関与を考慮し、IVIG 30g+DFPP×2を追加したところ4日でRI 0.65-0.7に改善した。腎機能は、腎移植時sCr 8.5mg/dLから約1週間でsCr2.0mg/dLに低下したが、蛋白尿は2.1-3.5g/day前後と遷延した。移植後1か月目生検では、ABMRの所見は認められず、一部に糸球体係蹄の泡沫細胞と上皮細胞の脂肪滴変性、上皮細胞の増殖があり、早期のFSGSあるいは半月体形成性腎炎を疑う所見であった。腎移植後3か月目生検では、数個の糸球体において、分節性に糸球体係蹄の拡大、泡沫細胞増生、上皮細胞の脂肪滴変性が顕在化し、cellular variantのFSGSの所見を認めた。Secondary FSGSの可能性を考慮し、降圧薬強化、タクロリムス適正化、減塩、減量を実施したが、蛋白尿は2.8-3.8g/g・Crまで増加した。以上より、primary FSGS再発の可能性も否定できないと考え、計10回の血漿交換+Rituximab 200mg加療後にロサルタン漸増(最大量100mg)およびダパグリフロジン5mg追加による集学的な治療実施した。腎移植後1年目生検では、cellular variantに相当する病変は引き続き認められたが、IFTAの進展はなかった。現在Cr 2.1mg/dL、蛋白尿 0.67g/g・Crにて経過している。本例は移植後早期にABMRおよびFSGSを随伴した症例で、わずか3か月という短期間に糸球体病変が進展したという点で興味深い症例であり、FSGS進展の成り立ちを考える上で示唆に富むため、文献的考察を含めて報告とする。

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