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第24回移植腎病理研究会で報告した病因不明の移植後再発性膜性腎症例に関して, 追加検討を行ったため報告する。
【臨床経過】1993年(27歳)に腎生検で膜性腎症と診断され、2004年4月に血液透析導入となった。2005年2月に一次生体腎移植を施行した。移植後10か月の生検で膜性腎症と診断、その後の生検でも膜性腎症の所見が持続し、移植腎機能低下により2009年に血液透析再導入となった。
2011年9月に二次生体腎移植を施行した。移植後3か月の生検で膜性腎症と診断した。その後の生検でも膜性腎症の所見が持続しており、ネフローゼレベルの蛋白尿が持続している。
【腎病理所見】自己腎生検:IgG(+++), IgG3(+), IgG4(-), PLA2R(-)
一次移植後10か月生検:IgG(+), IgG1(±), IgG2(+), IgG3(+), IgG4(-), PLA2R(-), 拒絶の所見なし
二次移植後3か月生検:IgG(++), IgG1(+++), IgG2(+), IgG3(++), IgG4(-), 拒絶の所見なし
IgGサブクラス結果ではIgG4は陰性であり、拒絶の所見・他の膜性腎症の原因もないことからetiology不明の移植後再発性膜性腎症と判断した。
【質量分析】一次移植後、二次移植後の検体を用いて液体クロマトグラフィーによる質量分析を施行した。
既知の膜性腎症抗原であるPLA2R、THSD7A、EXT1、EXT2、NELL1、SEMA3B、HTRA1は同定されなかった。
一方でcomplement receptor 1(CR1, CD35)がコントロールと比較し増加がみられた。
【CR1染色】一次移植後、二次移植後の検体において抗CD35抗体を用いて、IHCおよびIFで評価を行った。
IHCでは係蹄壁に顆粒状にCD35の陽性所見がみられ、コントロール群においてはpodocyteに陽性像がみられた。
IFではIgG、CD35が係蹄壁に顆粒状に陽性を呈しており、IgGとCD35は共局在していた。
【考察】CR1はpodocyteに発現している糖蛋白であり、通常は細胞膜上に局在する. CR1は補体系を制御しており(Java A, et al. Mol Immunol. 2015; 67: 584-95)、IgA腎症や膜性腎症などで発現が低下することが報告されている(Moll S, et al. Kidney Int 2001; 59: 160-168)。
過去にCR1の発現増強を呈した膜性腎症の症例報告されていない。
本症例はCR1の発現増強を伴う、特異な膜性腎症の移植後再発例と考えられた。
CR1がなぜ発現増強するのか、あるいはCR1が膜性腎症の原因抗原になり得るのかについては今後更なる検討が必要である。 |