慢性抗体関連型拒絶の発症前後での急性抗体関連型拒絶関連遺伝子スコアと病理学的因子の検討
Clinicopathological study of antibody mediated rejection-related gene set expression before and after the development of chronic active antibody-mediated rejection

北海道大学医学研究院 統合病理学教室
* 岩崎 沙理、谷口 浩二
市立札幌病院 病理診断科
岩崎 沙理、辻 隆裕、石井 保志、牧田 啓史、片山 優子
北海道大学病院 病理診断科
大塚 拓也
北海道大学病院 泌尿器科
堀田 記世彦
市立札幌病院 腎泌尿器外科
原田 浩、田邉 起、佐々木 元
はらだ腎泌尿器クリニック
原田 浩
Massachusetts General Hospital
Ivy A Rosales、Rex Neal Smith、Robert Colvin

【背景】慢性活動性抗体関連型拒絶(CAMR)は、移植腎廃絶に関与する重要な要因の一つである。CAMRに至る病態を解明するために、我々は移植腎組織を用いたmRNA解析を行い、転写産物と病理学的因子のスコア、移植片の転帰について多施設共同研究を行ってきた。NanoString社のnCounterプラットフォームとBanff Human Organ Transplant遺伝子パネルを利用して、770種類の転写物を定量した。転写物から算出される急性抗体拒絶関連遺伝子(AMR)スコアは、同じブロックから評価されたBanff病理学的スコアの傍尿細管毛細血管炎(PTCitis)と高い相関を示した。また、AMRスコアの高い症例は、5年以内に拒絶反応を発症する確率が高いことを報告した(Rosales IA, et al. JASN 2022)。しかしながら、AMRスコアとBanff病理学的スコアは必ずしも一致せず、予後予測が困難な症例も多い。
【目的】上述の検討症例のうち、市立札幌病院からエントリーした24症例(42検体)について、AMRスコアとBanffスコアの乖離があった症例を中心に再評価を行い、拒絶への進展を予測する病理組織的因子が存在する可能性について検討を行った。
【方法】CAMR発症群、非発症群とで、AMRスコアの変化とBanff組織学的スコアを中心とした病理組織学的所見に ついて、再検討を行った。
【結果】CAMR発症群ではAMRスコアは高い傾向があり、発症前よりも発症後で、スコアが高い傾向があったが、逆の症例もあった。CAMR非発症群でも、AMRスコアが高い症例もみられ、その場合、間質のリンパ球浸潤やPTC拡張などが観察された。CAMR未発症でAMRスコアが高い症例では、巣状リンパ球浸潤やPTC拡張が観察された。
【考察】移植腎組織の評価からAMRスコアを予測することは容易ではないが、CAMRへの進展を予測するために、PTCitisの評価を厳密に行うことが有用である可能性がある。

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