術前高用量免疫グロブリン投与を使用した免疫学的ハイリスク腎移植症例の病理学的検討
Pathological analysis of immunological high-risk renal transplantation with preoperative high-dose immunoglobulin administration

市立札幌病院 泌尿器科・腎臓移植外科
* 田邉 起、佐々木 元、塩野 裕、百田 尚史、杉戸 悠紀、原田 理予、佐藤 泰之、三浪 圭太、田中 博
市立札幌病院 病理診断科
辻 隆裕
はらだ腎泌尿器科クリニック
原田 浩

【目的】術前抗ドナー抗体(DSA)陽性腎移植に対する脱感作療法として高容量静注用免疫グロブリン(High-dose IVIg:H-IVIg)が適応となり3年が経過した。当院でフローサイトクロスマッチ(FCXM)陽性症例に対してH-IVIgを投与した症例の病理学的推移につき報告する。
【方法】対象は当院で術前FCXM陽性症例に対してH-IVIgを使用した7例。平均年齢は55.2歳、男性1例、女性6例、感作歴は妊娠歴4例、輸血歴2例、両方が1例。FCXMはT cell陽性が6例、B cell陽性が1例、抗HLA抗体同定検査では4例でMFI値1000以上のDSAが確認されていた。移植後の臨床経過、病理所見につき後方視的に検討した。
【結果】平均フォロー期間は中央値548日で、拒絶反応は3例に認めていた。1例は術後2日目に臨床的拒絶反応として血漿交換とステロイドパルス(SP)が行われ、6日目の移植腎生検でg3, ptc1, v1のActive antibody-mediated rejection(AMR)の確定診断となった。ほか2例で術後1か月の生検で急性T細胞性拒絶反応2aと診断されSPとサイモグロブリンによる治療が行われた。
 全例移植腎生着中で直近のeGFRは平均47.2ml/min(30.4-70.9)であるが、1年目のプロトコール生検では拒絶既往のある3例がChronic active AMR(CAAMR)の組織所見となっており、残り4例には拒絶の所見は認めなかった。
【結論】H-IVIgにより免疫学的高リスク症例の腎移植が可能となったが、術後早期の拒絶反応とその後のCAAMRに注意が必要である。

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