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移植後12年目に発症したPlasma cell-rich acute rejectionによるChronic active T cell-mediated rejectionの一例
A case of chronic active T cell-mediated rejection caused by plasma cell-rich acute rejection 12 years after kidney transplantation |
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東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 |
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林 綾香、山本 泉、大木 悠太郎、川邊 万佑子、小林 賛光、坪井 伸夫、大城戸 一郎、横尾 隆 |
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東京慈恵会医科大学 泌尿器科 |
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【症例】60代男性。
【病歴】23歳時より血尿・蛋白尿を指摘され、慢性糸球体腎炎疑いにて外来加療とするも、徐々に腎機能悪化し、50歳時に血液透析開始となった。51歳時に弟をドナーとするABO血液型適合生体腎移植(HLA full match、ダイレクトクロスマッチ陰性)を施行し、術後大きな合併症なく、血清Cr値 1.21 mg/dLで退院した。以降腎機能は安定し、移植後11年目以降もTAC 2 mg、MMF 1000 mg、mPSL 4 mg内服にて血清Cr値 1.5 mg/dL前後で経過していた。しかし、移植後12年目に約2ヶ月間でCr 3.02 mg/dL(蛋白尿0.32g/gCr)と腎機能増悪があり、移植腎生検目的に入院となった。
【経過】Banff 2019分類ではt3、i2、g0、v0、ptc2、ct2、ci2、cg0、cv0、ah1、aah1、iIFTA2、ti3、tIFTA3、C4d2であった。間質の浮腫状及び線維性拡大が30%程度で、炎症細胞の間質浸潤は皮質域の70%に及び、炎症細胞の種類は形質細胞が主体で、高度の尿細管炎が認められた。C4d2であり、抗HLA抗体を検索したが、ドナーHLA特異抗体は検出されなかった。追加染色において、軽鎖制限はなく、SV40陰性、EBER陰性であった。以上から、Plasma cell-rich acute rejection(PCAR)タイプのAcute TCMRの遷延に伴う、Chronic active TCMR grade1Bと診断した。間質の浮腫状の拡大が目立つことから、比較的早期のPCARと考え、mPSL1000mg 3日間投与(ステロイドパルス療法)を速やかに実施した。移植腎機能は血清Cr値2.2 mg/dLと改善し、他の合併症も認められなかった。3ヶ月後に治療効果判定目的に移植腎生検を施行したところ、間質線維化の進展は認めたが、間質の浮腫状変化や尿細管炎は消失していた。現在外来での移植腎機能は血清Cr値 2.4 mg/dL前後で経過している。
【結語】PCARはT細胞性急性拒絶反応のなかでも稀な予後不良疾患で、有効な治療法も確立されておらず難治性である。今回、我々は移植後12年目に発症した比較的早期のPCAR症例に対し、速やかなステロイドパルス療法が奏功した一例を経験したため、PCARの治療戦略を考えるうえで貴重な症例であり、文献的考察を加え報告する。 |
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