免疫プロテアソーム機能低下が腎虚血再灌流障害に与える影響について
Decreased immnoproteasomal function exacerbates renal ischemia reperfusion injury

市立札幌病院 病理診断科
* 石井 保志、岩崎 沙理、辻 隆裕、仲川 心平
北海道大学大学院医学研究院 分子病理学教室
岩崎 沙理、仲川 心平、谷口 浩二、笠原 正典、外丸 詩野
北海道大学大学院医学研究院 腎泌尿器外科学教室
堀田 記世彦、篠原 信雄
市立札幌病院 腎臓移植外科
佐々木 元
北海道大学大学院保健科学研究院 病態解析学分野
石津 明洋
北海道大学病院 病理部
外丸 詩野

 移植片機能遅延(DGF)は腎移植後にしばしば起こる初期合併症であり、移植片の長期予後に影響を与える。DGFの原因は腎虚血再灌流傷害(IRI)とされており、IRIでは虚血による傷害に加えて、再灌流時に発生する活性酸素種による酸化ストレスが大きな役割を果たしている。酸化ストレス応答は、細胞内タンパク質分解酵素複合体であるプロテアソームの重要な機能の一つであり、最近の研究では、特殊なアイソフォームである免疫プロテアソームが通常型よりも高い酸化タンパク質分解能を持つことが明らかになっている。本研究では、免疫プロテアソームの発現変化が腎IRIに及ぼす影響を調べた。免疫プロテアソームのサブユニットであるβ5iの発現は、DGF症例からの移植腎生検標本の血管内皮細胞で低下していた。また、β5i遺伝子欠損マウスでは、野生型マウスに比べて腎IRIが増悪し、炎症や酸化ストレスが悪化した。In vitroでは、免疫プロテアソームの阻害と低酸素/再酸素化により、マウス腎血管内皮細胞の細胞ストレスや活性酸素種の産生が増加した。これらの結果から、内皮細胞における免疫プロテアソーム機能の低下は、内皮細胞傷害の増強を通じて腎IRIを悪化させ、DGF発症のリスクとなる可能性が示唆された。

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