慢性活動性T細胞関連拒絶の治療反応性の検討:単施設症例集積研究
The responsiveness of chronic active T cell-mediated rejection: a single center case series study

九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学
* 安宅 映里、松隈 祐太、植木 研次、中川 兼康、土本 晃裕、北園 孝成、中野 敏昭
九州大学大学院医学研究院 臨床腫瘍外科学
野口 浩司、岡部 安博
福岡大学医学部 腎臓・膠原病内科
升谷 耕介
九州大学大学院医学研究院附属総合コホートセンター
中野 敏昭

【目的】2017年Banff分類で改定された慢性活動性T細胞関連拒絶(CA-TCMR)は、腎予後不良とされているが、治療反応性は明らかではない。今回、CA-TCMRの中で、急性T細胞関連拒絶(acute TCMR)との同時診断に着目し、その治療反応性を検証した。

【方法】2018年1月1日〜2020年12月31日に九州大学病院で移植腎生検を施行した症例のうち、2017 年Banff分類でCA-TCMRもしくはacute TCMRと診断した18歳以上の41例を対象とした。CA-TCMR単独群(CA群)、CA-TCMR/acute TCMR合併群(CA/a群)、acute TCMR単独群(a群)の3群に分け、生検時と1年後のeGFR変化量をアウトカムとし、Wilcoxonの符号付順位検定で比較した。

【結果】CA群23例、CA/a群14例、a群4例に分類され、ベースラインのBanffスコア平均値はCA群:CA/a群:a群でci(2.3:1.2:0.3)、ti(2.3:2.4:1.8)、i-IFTA(2.7:2.7:0.5)、t(2.3:2.5:2.5)であった。ステロイドパルスを含む治療がそれぞれ15例(65%)、11例(79%)、3例(75%)に施行された。移植腎喪失は3例(CA群治療なし1例、CA/a群治療あり2例)に認めた。治療群における生検時→1年後のeGFR平均値はCA群で31.3→31.5ml/min/1.73m2(p=0.53)、CA/a群で36.7→42.0ml/min/1.73m2(p=0.05)、a群で51.3→50.9 ml/min/1.73m2(p=0.50)であった。CA/a群では治療前後でeGFRが改善する傾向であった。

【結論】CA-TCMRにおいて、acute TCMR合併の有無は治療反応性の指標となる可能性がある。

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