腎移植後早期にTMAを発症し、診断・治療に苦慮した一例
Difficulty in diagnosis and treatment of TMA early after kidney transplantation

名古屋大学医学部附属病院 腎臓内科
* 関谷 由夏、田中 章仁、前田 佳哉輔、齋藤 尚二、加藤 規利、小杉 智規、丸山 彰一
名古屋大学医学部附属病院 泌尿器科
藤田 高史、加藤 真史

【症例】60歳台男性。糖尿病性腎症を原疾患とする末期腎不全に対してX-1年5月に腹膜透析を導入した。X年4/16に妻をドナーとする血液型不適合移植(ドナーA型→レシピエントO型)を施行した。移植後1週間での血清クレアチニン(Cre)値は1.3mg/dlと落ち着いていたが、移植後2週間頃よりCreの上昇を認め、X年5/1にCre:1.98mg/dlまで上昇し、拒絶の可能性を疑いエピソード生検を施行した。同日から3日間ステロイドパルス療法を開始したが、Creは3.17mg/dlまで上昇し、5/7頃からは血小板の低下も認めた。腎生検結果から血栓性微小血管傷害症(TMA)と診断し、TMAの要因としてaHUS、薬剤性などを鑑別として挙げたが、抗体関連型拒絶の関与も完全に否定できなかったため、血漿交換、免疫グロブリン大量療法(IVIG)を開始した。その後もLDH軽度上昇、貧血・血小板低下が持続したため、aHUSとしてラブリズマブの投与を行ったが、明らかな効果は認めなかった。経過フォローのため、5/25に再度腎生検を施行(血小板低下のため開放腎生検)した。糸球体係蹄内、PTC内に炎症細胞の浸潤を認めるも、TMA所見は改善を認めていた。Creは3.17mg/mlをピークに徐々に改善したが、血小板減少は回復に時間を要した。腎移植後のTMA の原因は@aHUS を原疾患とする慢性腎不全症例の移植後の再燃、A移植後新規に発症するaHUS、B免疫抑制薬、抗体関連型拒絶反応など臓器移植に伴う二次性TMA の3つに分けられるが、本例は慢性腎不全の原疾患は糖尿病性腎症であり、臨床・病理所見からはTMA の原因をひとつに絞り込むことは困難であった。文献的考察を含めて症例提示する。

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