横紋筋融解症による急性腎障害を発症した心停止ドナーから献腎移植を行った1例
A case of kidney transplantation from a deceased donor with acute kidney injury due to rhabdomyolysis

市立札幌病院 腎臓移植外科
* 高田 祐輔、田邉 起、平野 哲夫
市立札幌病院 泌尿器科
閑 仁志朗、原田 理予、相澤 翔吾、氏橋 一紘、三浪 圭太、田中 博
市立札幌病院 病理診断科
岩崎 沙理、辻 隆裕

 34歳男性。先天性尿路奇形による慢性腎不全のため15年の血液透析を経て、10代の心停止ドナーから献腎移植が施行された。ドナーは搬送時の血清クレアチニン(sCre)は0.6mg/dLで、腎エコー評価でも腎の形態や血流に異常は認めなかった。心停止ドナーのため大腿動脈からのカニュレーション施行し、待機58時間が経過した時点で、クレアチンキナーゼが57000IU/Lと異常高値を呈し、横紋筋融解症とそれに伴う急性腎障害(sCre: 1.4mg/dl)が疑われた。しかし、利尿状態が良好であっため提供可能と判断し腎摘出が行われた。摘出腎の灌流状態は良好だったが、暗赤色の色調は改善せず、小児レシピエントが待機する複数の施設が辞退となった結果、摘出腎が待機した状態で、レシピエント候補の第50位である本症例が選定された。当院で施行された移植腎の0時間生検では、尿細管上皮の平坦化と刷子縁消失があり、尿細管全体の30%にミオグロビン円柱を認め、横紋筋融解症関連の尿細管障害と診断された。総阻血時間は17時間40分で、血液透析は術後14日目に離脱した。移植腎機能は良好(sCre1.18mg/dl)で、術後24日目に退院となった。移植後1.5か月のプロトコール生検ではミオグロビン円柱は消失し、尿細管上皮障害も改善を認めた。移植後20か月経過しているが、sCre1.0mg/dl前後と、低腎機能なく経過している。

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