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移植後早期再発および治療後長期寛解維持後の再度再発の病理像を検討し得たIgA-λ型Light Chain Deposition Disease(LCDD)の一例
Reccurence of IgA-λ type Light Chain Deposition Disease (LCDD) in allograft after long-term remission |
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日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院 腎臓内科 |
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小林 アズサ、武田 朝美、新城 響、井口 大旗、伊藤 千晴、岡田 絵里子 |
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日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院 移植外科・移植内科 |
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余西 洋明、西沢 慶太郎、二村 健太、岡田 学、平光 高久、後藤 憲彦、一森 敏弘、鳴海 俊治、渡井 至彦 |
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症例は64歳女性。43歳時に腎機能の低下を伴わない1g/日程度の蛋白尿および免疫電気泳動で血清中IgA-λ、尿中ベンスジョーンズ蛋白-λのM蛋白を指摘された。骨髄検査でMonoclonal gammopathy of undeterminedsignificance(MGUS)、腎生検では細線維性糸球体腎炎(Fibrillary glomerulonephritis)と診断され、腎保護療法が行われたが、進行性に腎機能は低下し、47歳で血液透析導入となった。
51歳時に姉をドナーとしたABO適合生体腎移植手術が施行された。移植後早期の経過は良好で、sCr 0.7 mg/dlまで速やかに低下し、検尿異常もなく、血流再開1時間後と移植後3週の移植腎生検ではドナー由来の動脈硬化性病変を認めるのみであった。移植後6ヶ月頃より腎機能の悪化、尿蛋白が出現し、移植後12ヶ月には sCr 1.62mg/dl、尿蛋白2.2 g/日となり、エピソード生検を実施した。糸球体は結節性病変を伴う膜性増殖性糸球体腎炎様病変がみられ、糸球体基底膜(GBM)および尿細管基底膜(TBM)には軽鎖λが線状に沈着していた。電顕ではTBM外側、GBM内側に沿った細かなdense depositsが確認され、LCDDと診断した。振り返って6ヶ月プロトコル生検においても、蛍光抗体法でGBM、TBMにλが線状に陽性であり、電顕所見もLCDDに相当した。IgA-λ型のM蛋白血症を認めるが、クローナルな骨髄中形質細胞は10%未満であり、MGUSに伴うLCDDとしてボルテゾミブ+デキサメタゾン(BD)療法が行われた。5クールまで実施した時点で末梢神経障害、腎機能悪化を認め中止となったが、蛋白分画でのMピークは消失し、血清学的に完全寛解に至り治療は終了した。以後尿蛋白は陰性化し、sCr 1.2〜1.5mg/dlと腎機能も安定して経過していた。寛解後10年経過した頃から蛋白分画でMピークが出現した。その1年後にはTP/Cre 2.0〜6.0 g/g・Cr程度の蛋白尿が持続し、腎機能もsCr 2.0 mg/dlと悪化したため、移植後13年4ヶ月でエピソード生検を実施した。前回の所見と比較して、糸球体は高度な結節形成や内皮下拡大がみられ、上皮細胞の変性腫大やcappingを呈していた。間質ではびまん性に線維化および萎縮尿細管が拡がり、TBMは不規則に肥厚していた。蛍光抗体法ではびまん性に軽鎖λがTBMに線状に沈着していた。今回もクローナルな骨髄中形質細胞は4〜5%で骨病変もなく、MGUSに伴うLCDDの再発と診断され、ダラツムマブ(ヒト型抗CD38モノクローナル抗体)+ポマリスト+デカドロン(DPd)療法での治療が予定されている。
LCDDは非常に稀な疾患であり、移植後の再発率が高く、再発後の移植腎予後が不良であるため、腎移植の適応にはしないことが推奨されている。われわれは過去に移植後6ヶ月で再発したLCDDとして本例を報告している。BD療法で寛解した後10年もの間、再発なく、腎機能も安定して経過するという移植後再発LCDDの経過に加えて、今回長期寛解後に再発したLCDDの病理組織像を評価しえた貴重な症例を報告する。
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