腎移植後IgM- monoclonal gammopathy of undetermined significance(MGUS)関連腎症再発の1例
A case of kidney transplantation with recurrent IgM- monoclonal gammopathy of undetermined significance (MGUS) associated nephropathy

戸田中央総合病院 泌尿器科・移植外科
* 木島 佑、清水 朋一、加藤 慎也、狩野 香奈、堀内 俊秀、角山 邦子、東間 紘、飯田 祥一
東京女子医科大学 泌尿器科
尾本 和也、高木 敏男
順天堂大学医学部附属浦安病院 泌尿器科
野崎 大司
東京女子医科大学八千代医療センター
乾 政志
東京女子医科大学 移植管理科
海上 耕平、石田 英樹

【緒言】腎移植後にIgM- monoclonal gammopathy of undetermined significance(IgM-MGUS)関連腎症を再発した稀な症例を経験したので報告する。

【症例】症例は45歳男性、原疾患は膜増殖性糸球体腎炎(MPGN)とされていた。先天的C4欠損症も合併していた。母親をドナーとしたABO不適合腎移植を2021年8月に施行した。
 初期免疫抑制レジメンは、タクロリムス、ステロイド、ミコフェノール酸モフェチル、バシリキシマブ、リツキシマブ(Rit)であった。腎移植直後から腎機能は良好に推移したが、蛋白尿が出現してきた。新規の巣状糸球体硬化症の発症を疑い血漿交換(PEX)を施行していた。移植後50日頃より血清クレアチン値(Cr)が上昇し移植腎機能の低下を認めたため、急性拒絶反応を疑いステロイドパルス療法、デオキシスパーガリンの点滴を施行するとともに、移植後57日に移植腎生検を施行した。拒絶反応は無かったが、多くの糸球体係蹄内にPAS陽性の好酸性の蛋白様物質を認めた。免疫組織化学染色と蛍光抗体染色では糸球体係蹄内にIgM・λ陽性の蛋白様構造物を認めた。電顕でも一部の糸球体毛細血管内腔に通常の免疫複合体より電子密度の低い無構造の塞栓物を認めた。以上より原発性マクログロブリン血症関連腎症が疑われた。東京女子医科大学病院にて骨髄生検を実施し、形質細胞の増加を認めたが、原発性マクログロブリン血症の診断はとはならなかった。以上よりIgM- MGUS関連腎症と診断した。東京女子医科大学病院で施行された移植腎生検でも同様にIgM-MGUS関連腎症の病理組織像であった。その後、紹介病院より取り寄せた自己腎生検により、原疾患はMPGNではなく、IgM-MGUS関連腎症であることが判明し、再発の診断となった。
 IgM-MGUSの治療として、原発性マクログロブリン血症の治療に準じてDRC(デキサメタゾン、リツキシマブ、シクロホスファミド)療法を施行するとともにPEXも併用した。DRC療法により重篤な副作用が発生したため、血漿交換を継続するとともに、移植腎機能悪化(血清クレアチニン値が4mg/dL台)のため、週1回の血液透析も施行している。今後はbortezomib投薬を考えている。

【結論】腎移植後のIgM- monoclonal gammopathy of undetermined significance(IgM-MGUS)関連腎症再発は治療が難しく、腎移植の適応の是非が問われると思われる。

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