巣状分節性糸球体硬化症の移植後再発例の1時間生検検体におけるネフリンの局在変化と抗ネフリン抗体の関与
A possible role of anti-nephrin autoantibody in endocytosis of nephrin in 1-hour biopsy specimens in patients with post-transplant FSGS recurrence

東京女子医科大学 腎臓小児科
* 白井 陽子、三浦 健一郎、中谷 諒、中村 実沙子、加藤 彩、江口 誠、安藤 太郎、石塚 喜世伸、服部 元史
東京大学病院 小児科
神田 祥一郎
東京女子医科大学 第二病理学教室
種田 積子
聖マリアンナ医科大学病院 病理診断科
小池 淳樹
昭和大学医学部 解剖学講座顕微解剖学部門
本田 一穂
山口病理組織研究所
山口 裕

【背景】最近、私たちは一次性巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の移植後再発例1例において、血漿中の抗ネフリン抗体がネフリンのチロシンリン酸化を介してネフリンの局在変化とポドサイトの足突起消失をきたすことを示し、抗ネフリン抗体が移植後再発をきたす循環因子の候補であることを報告した(Hattori, et al. Am J Transplant2022)。今回、ネフリンの局在変化に関わるリン酸化およびエンドサイトーシスの機序を検討するため、症例数を増やして、FSGS移植後再発例の血流再開後1時間(1h)の移植腎生検検体を用いて免疫染色で検討した。

【方法】原疾患を一次性FSGSとし、腎移植後FSGSを再発した4例と非再発例4例それぞれの血流再開後0時間(0h)と1hの生検検体を用いて、ネフリンとIgG、IgGとリン酸化ネフリンの二重染色を超解像顕微鏡(SIM)で観察した。また、リン酸化ネフリンのアダプター蛋白でendocytosisに関わるShcA、ネフリンとraft-mediated endocytosisのマーカーであるcholera enterotoxin subunit B(CTxB)の二重染色を共焦点顕微鏡で観察した。

【結果】移植後再発の4例全例において、1h検体でpunctateなIgGの沈着を認め、かつネフリンならびにリン酸化ネフリンと共局在した。さらに、ShcAの発現が増強してネフリンと共局在した。そして、ネフリンはポドサイトの細胞質内に局在変化し、CTxBと共局在した。なお、両群の0h検体および非再発例4例の1h検体ではIgGの沈着、ネフリンのリン酸化、ShcAの発現増強は認められず、ネフリンの局在変化はみられなかった。

【結論】生体腎移植後FSGS再発において、抗ネフリン抗体が結合したネフリンがリン酸化され、RMEの機序を介して局在が変化する可能性が示唆された。今後さらに症例を集積し、血漿中の抗ネフリン抗体が関与する割合も含め、FSGS移植後再発における蛋白尿発症の機序を解明する必要がある。

戻 る  ページの先頭