巣状分節性糸球体硬化症の移植後再発例における1時間生検検体でのスリット膜関連分子のエンドサイトーシスの関与
Endocytic internalization of slit diaphragm-associated molecules in 1-hour biopsy specimen in a patient with post-transplant FSGS recurrence

東京女子医科大学 腎臓小児科
* 白井 陽子、三浦 健一郎、石塚 喜世伸、安藤 太郎、池野 かおる、
白鳥 孝俊、金子 直人、服部 元史
東京女子医科大学 腎臓病総合医療センター 病理検査室
堀田 茂
東京女子医科大学 第二病理学教室
種田 積子
聖マリアンナ医科大学病院 病理診断科
小池 淳樹
昭和大学医学部 解剖学講座 顕微解剖学部門
本田 一穂
山口病理組織研究所
山口 裕

【背景・目的】巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の腎移植後再発は移植腎機能低下のリスクとなるが、ポドサイトにおける蛋白尿再発の分子メカニズムは解明されていない。移植後1時間(1h)生検検体は、患者血清暴露後極めて早期のスリット膜関連分子の解析が可能であり、FSGS再発の病態解明において重要な知見となる可能性がある。
スリット膜構成分子であるnephrinは、リン酸化によりraft-mediated endocytosis(RME)を介した局在の変化が観察されることが報告されている(Qin et al. JASN 2009)。今回、一次性FSGSの移植後再発例と非再発例におけるnephrin及びpodocinの局在変化と、RMEの関与について解析をした。

【方法】原疾患を一次性FSGSとし、生体腎移植後FSGSを再発した1例と非再発例1例の、それぞれ血流再開後0時間(0h)と1hの生検検体を用いた。再発例では、移植後数時間で蛋白尿の出現を認め、各種治療に反応せず移植腎機能廃絶に至った。それぞれの検体において、光顕および電顕所見を検討した。また、nephrin及びpodocinの局在を、RMEのマーカーであるcaveolin-1とcholera enterotoxin subunit B(CTxB)との蛍光多重染色で観察した。

【結果】再発例の1h検体の光顕像は微小糸球体変化で、電顕ではびまん性の足突起消失を認めた。蛍光多重免疫染色では、nephrinは非再発例の0h、1h検体及び再発例の0h検体で係蹄に線状に局在していたが、再発例の1h検体ではポドサイトの細胞質内にびまん性に局在し、CTxBと共局在した。caveolin-1とは共局在しなかった。一方、podocinは、再発例の1h検体においても係蹄に線状に染色され、局在変化を認めなかった。

【結論】FSGS移植後再発例では、血流再開1時間後の超急性期に、nephrinの細胞質内への局在変化がみられ、RMEによる機序が示唆された。今後、細胞骨格関連分子を含む他のポドサイト関連分子についても解析する予定である。

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