生体腎移植後16年目にIgA腎症再発をきたした1例
Recurrence of IgA nephropathy 16 years after living kidney transplatation : A case report

市立札幌病院 腎臓移植外科
* 高本 大路、佐々木 元、高田 祐輔、樋口 はるか、平野 哲夫
はらだ腎泌尿器クリニック
原田 浩
市立札幌病院 病理診断科
辻 隆裕

 IgA腎症は腎移植後に再発をきたす原疾患の一つであり、再発率は13-50%といわれている。10年以内の腎廃絶率は9.7%で、一般的な移植後の廃絶率と同程度である。治療としては初発のIgA腎症と同様に扁桃摘出術やステロイドパルスが有効とされている。
 当院では長期のステロイド併用による合併症を危惧し、積極的にステロイドの中止を試みている。移植後15年目に腎機能が安定していたためステロイドを中止し、1年後の腎生検でIgA腎症再発をきたし扁桃摘出術およびステロイドパルス療法にて治癒した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。
 症例は46歳女性。19歳で紫斑病性腎症による末期腎不全となり血液透析導入された。28歳で父をドナーとした血液型適合生体腎移植術を施行された。HLAは3ミスマッチ、CDCXM(-)、FCXM(-)であった。導入免疫抑制療法はTAC MMF PDで行い、S-Cr0.8mg/dLで退院となった。移植後7年目の定期腎生検からIgA沈着は認めるものの明らかな病変なく、また腎機能も安定して推移していた。移植後15年目生検では大きな以上なくステロイドの減量を開始し、半年以上かけて中止した。中止後半年程度で腎機能は著変ないものの尿潜血が継続したため移植腎生検を行った。病理結果はびまん性に糸球体へのIgA沈着と半月体形成を認めH gradeⅡに相当する活動性IgA腎症の診断となった。扁桃摘出術とステロイドパルス療法を1コース施行し、ステロイドの再開とEVRを追加し4剤で維持している。治療後の腎生検では半月体は消失し、糸球体炎もなく軽度のメサンギウムへのIgA沈着のみであった。
以降、6か月程度のフォロー期間では、尿潜血なく腎機能も安定して推移している。

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