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小児生体腎移植例の1年目プロトコール腎生検におけるi-IFTAの臨床病理学的検討 |
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東邦大学医学部 腎臓学講座 |
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橋本 淳也、小口 英世、濱崎 祐子、高橋 雄介、久保田 舞、
板橋 淑裕、河村 毅、村松 真樹、篠田 和伸、大橋 靖、
宍戸 清一郎、酒井 謙 |
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東邦大学医学部 病理学講座 |
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東邦大学医学部 病院病理学講座 |
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山口病理組織研究所 |
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【背景・目的】2015年のBanff会議で定義された移植腎組織における荒廃領域の炎症細胞浸潤(i-IFTA)の重要性が近年注目されている。Nankivellらは膵腎移植コホートで、1年目生検のi-IFTAの存在が同時点及び移植後10年までの腎機能低下を反映すると報告した。
また2017年のBanff会議ではi-IFTA scoreを用いたChronic active T cell mediated rejection(CATCMR)が定義された。
しかしi-IFTAの成因は拒絶反応などの免疫学的機序だけではなく、動脈硬化性変化や、CNIなどの薬剤、尿路感染症など多岐に及ぶとされている。また、i-IFTAに関する既報は主に成人腎移植患者を対象としたもので、小児腎移植患者におけるi-IFTAの意義については報告されていない。
我々の施設での小児腎移植後の定期腎生検では、i-IFTAの所見が比較的多く観察され、髄放線障害やscar様の血流障害を示唆する組織など、荒廃領域に炎症細胞浸潤を伴っているものの、必ずしも拒絶反応と断定できない症例がしばしば認められている。
今回我々は、小児生体腎移植例の1年目プロトコール生検におけるi-IFTAの臨床病理学的特徴、長期予後の関連を調査した。
【方法】2009年3月−2014年3月に当科で生体腎移植を受けた移植時年齢16歳未満の患者のうち、移植後5年間の経過が追跡できた48名を後方視的に調査した。移植後1年目生検におけるi-IFTAの有無により対象を2群[i-IFTA(+)群、i-IFTA(−)群と定義]に分け、移植後1、3、5年目の移植腎機能の推移を比較した。
Banff score及びCATCMRの診断に関しては、Banff 2015及び2017基準に従って、組織の再評価を行った。髄放線障害については髄放線に限局する尿細管萎縮・間質線維化が3か所以上認められるものを、髄放線障害(+)と定義した。
さらに移植後1年目生検の結果に基づいた拒絶反応治療(ステロイドパルス療法、ATG、DSG[Txと定義])の有無により、治療後の経過を比較した。
移植腎機能は測定時の患者の年齢に応じて上村の5次式(19歳未満)、または日本腎臓学会の計算式(19歳以上)を用いて推定糸球体濾過量(eGFR)を算出して評価した。
【結果】対象患者48例中、移植後1年目の腎生検においてi-IFTAを認めたのは26例(54.2%)であった。生検時年齢、CATCMRの診断基準を満たした症例についてi-IFTA(+)/(−)群で比較するとそれぞれ8.4±4.2歳 vs. 8.7±3.7歳、2/26例(7.7%)vs. 0/22例(0%)であり、いずれも有意差は認められなかった。またacute TCMR、BK腎症と診断された症例は認められなかった。Txが追加された症例についてi-IFTA(+)/(−)群で比較すると、8/26例(30.8%)vs. 0/22例(0%)であり、有意にi-IFTA(+)群で多かった(p=0.005)。
治療を行った8例は、腎生検当時のBorderline change(n=7)、acute TCMR(n=1)の病理診断を根拠に治療介入が行われていた。
また、髄放線障害の保有率についてi-IFTA(+)/(−)群で比較すると、16/26例(61.5 %)vs. 2/22例(9.1 %)であり、有意にi-IFTA(+)群で高かった(p=0.0002)。
次に対象患者をi-IFTA(−)群、i-IFTA(+)/Tx(−)群、i-IFTA(+)/Tx(+)群の3群(n=22、18、8)に分け、移植後1、3、5年目の平均eGFR(ml/min/1.73m2)を確認した(1年目: 67.9±14.0 / 68.8±16.8 / 65.7±21.8、3年目: 67.3±11.7 / 66.5±20.6 / 61.4±16.4、5年目: 62.1±14.0 / 66.3±20.5 / 63.8±19.8)。これらのうち、①: i-IFTA(−)群 vs. i-IFTA(+)/Tx(−)群の2群及び②:i-IFTA(+)/Tx(+)群 vs. i-IFTA(+)/Tx(−)群の2群の平均eGFRを比較したが、①、②ともにいずれの時点でも有意差は認められなかった。
さらに髄放線障害(+)/(−)群において、移植後1、3、5年目の平均eGFRを比較したが、いずれの時点でも有意差は認められなかった(1年目: 71.7±18.0 / 65.6±14.8、3年目: 6.6±20.7 / 65.6±13.0、5年目: 67.3±19.8 / 61.9±15.8)。
【結論】①の比較結果より、小児生体腎移植例における1年目のi-IFTAの有無が移植後5年目までの腎機能に与える影響は乏しいと考えられた。また②の比較結果よりi-IFTA(+)群ではTxの有無が以後の腎機能に与える影響は乏しいと考えられた。また、i-IFTA(+)群ではCATCMRの保有率は比較的低かったが、一方で有意に髄放線障害の保有率が高かった。髄放線障害は、非免疫学的な所見と考えられており、拒絶反応などの免疫学的関与は乏しい所見と考えられている。小児のi-IFTAの形成には髄放線障害が関与していること及び、そのために小児のi-IFTAに対するTxの有無が移植腎機能に及ぼす影響が少ない可能性が示唆された。 |
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