血管病変を伴う急性期抗体関連型拒絶反応の一例
A case of acute antibody mediated rejection with vascular lesions

東京都保健医療公社 大久保病院 腎センター
* 小川 俊江、今泉 雄介、吉川 佳奈恵、川地 慧子、戸田 美波、
石渡 亜由美、亀井 唯子、川西 智子、阿部 恭知、遠藤 真理子、
若井 幸子、白川 浩希

【症例】53歳男性
 慢性糸球体腎炎によると思われる慢性腎不全にて2013年10月10日妻(54歳)をドナーとしたpreemptive生体腎移植術を施行。
 移植までに輸血歴なし。血液型不一致(O+→B+)HLA 2ミスマッチ CDC(-)、FCXM(-)、DSA(-)にてMP TACMMF basiliximab rituximab200mgにて免疫抑制を導入した。
 術直後よりCreの低下が緩徐であり、POD4でCre2.21 mg/dlであったが、POD5 Cre2.38 mg/dlへ上昇するとともに軽度のLDH上昇、貧血、血小板数の低下を認め、血栓性微小血管障害症(TMA)も念頭におきつつ、抗体関連型拒絶(AMR)としてPOD5-10の間に、ステロイドセミパルス、DFPP1回、血漿交換3回、rituximab300mg追加投与を施行しPOD12に腎生検@を施行した。腎生検結果がAMRであったことより、更にステロイドパルス及びIVIGの投与を追加しCre2.0-2.2 mg/dlで腎機能が安定したことを確認しPOD38に腎生検Aを行い退院された。以後現在まで腎機能は安定しており、その後プロトコル生検を定期的に行っているが拒絶反応はみられずに経過している。
 拒絶反応発症時の腎生検①では中等度の傍尿細管毛細血管(PTC)炎及び糸球体炎がみられた。血管内皮炎も中等度みられたが、T細胞型拒絶(TMR)の所見はみられず、AMRに関連した血管拒絶と考えられた。一連の治療が終了したあとの腎生検では糸球体炎、尿細管炎、PTC炎は消失していたが、過去のAMRを反映した小葉間動脈の線維性内膜肥厚が残存した。
 腎移植後拒絶反応における血管病変はAMR、TMRいずれにも起こることが知られており、また近年ではisolated V lesinと呼ばれる血管単独病変も指摘されている。今回DSA及びC4d陰性で強い血管病変を認めるAMRを経験した。AMRを克服した後5年間にわたり腎生検フォローを行っているが、血管変化は残存するものの、その後の腎機能や血圧に悪化は認めていない。本症例のような拒絶反応発症時の血管病変とその後について、若干の文献的考察を加え検討する。

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