腎移植における持ち込み糖尿病性腎症の経時的な改善をプロトコール腎生検で病理学的に確認できた1例
Histological improvement of the case of living kidney transplantation from diabetic donor to non-diabetic recipient

加古川中央市民病院 腎臓内科
* 菊田 淳子
神戸大学大学院医学研究科 腎臓内科
吉川 美喜子、西 慎一
神戸大学大学院医学研究科 腎泌尿器科
石村 武志
神戸市立医療センター中央市民病院 病理診断科
原 重雄

【症例】47歳女性

【既往歴】23歳 妊娠高血圧症候群、糖尿病の既往なし

【現病歴・経過】学童期より尿蛋白、尿潜血を指摘されていたが精査加療は行っていなかった。44歳時に全身倦怠感、食欲不振を認め、慢性糸球体腎炎による末期腎不全と診断し、血液透析を開始した。46歳時に2型糖尿病の夫(47歳)をドナーとする生体腎移植を施行した。免疫抑制剤はPSL、TacER、MMFの3剤を内服し、経過良好であった。ドナーは約20年の2型糖尿病の罹患歴があるが、経口血糖降下薬でHbA1c6.5%以下にコントロールされており、アルブミン尿は認めなかったためドナー適応と判断した。1時間腎生検では、光顕では糸球体に軽度のメサンギウム基質の増加、細動脈のhyalinosisを認め、光学顕微鏡所見から糖尿病としての変化が疑われた。また蛍光染色ではIgGが糸球体基底膜、尿細管基底膜に線状に陽性であった。これらは糖尿病性腎症に矛盾しない所見と考えられた。
3か月、1年後のプロトコール腎生検では、細動脈のhyalinosisは経時的に改善し、蛍光染色ではIgGが減弱し陰性となった。電子顕微鏡所見で基底膜の肥厚は1時間生検で平均788nm、1年後生検では平均678nmと継時的に改善した。

【結語】糖尿病を有するドナーから非糖尿病のレシピエントへ生体腎移植を施行し、移植腎における糖尿病性変化が1年の経過で経時的に改善することを病理学的に確認できた貴重な症例を経験した。当院の耐糖能異常を有するドナーからの生体腎移植11例中2例で同様の変化がみられた。糖尿病早期の病理変化とその可逆性について考察し、ここに報告する。

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