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【目的】移植腎において、Transplant glomerulopathyやカルシニューリン阻害薬による薬剤性障害などの様々な影響により、2次性に糸球体効果(FSGS)病変が出現することが知られているが、発症に関連する因子や移植腎予後についての検討は少ない。
【対象・方法】兵庫県立西宮病院で腎移植が施行された患者のうち、2010年4月以降に移植腎生検が施行され、FSGS病変が認められた25症例を対象とした。そのうち、再発性腎炎と診断した8症例と転帰不明な1症例を除外した16症例について検討を行った。病理組織学的所見はBanff分類に従い、各パラメーターについてscoringを行った。
【結果】レシピエントの移植時年齢の中央値(range)は43歳(24-58)、移植腎生検時期の中央値は移植後99 ヵ月(38-233)、男女比は11:5(男:女)、ドナー年齢は65歳(44-77)、男女比は4:12(男:女)であった。それらのうちABO不適合腎移植は2例で、献腎移植は1例であった。それらの症例のBanffスコアは、ciスコアは0:12例、1:4例、ctスコアは0:9例、1:7例、cgスコアは0:11例、1:1例、2:2例、3:2例、cvスコアは0:14例、2:1例、3:1例、ahスコアは0:3例、1:8例、2:4例、3:1例、mmスコアは0:12例、1:4例であった。現在までの観察期間中16例中8例がgraft lossしており、FSGS病変を認めてからの移植腎生着率は2年後86.2%、4年後69.1%、6年後21.6%であった。graft lossまでの生着期間中央値は52 ヵ月であった(カプランマイヤー法)。移植腎予後を予測するパラメーターとして、全糸球体のうち、FSGS病変の占める割合の関与を検定したが、有意な因子とはならなかった。
【結論】移植腎にFSGS病変が認められた場合のgraft lossまでの生着期間中央値は52 ヵ月であった。今後、FSGS病変を有する症例の予後因子については、症例を積み重ね、さらなる検討が必要である。 |