機能廃絶に至った移植腎グラフト3例の病理学的検討

東京女子医科大学 腎臓内科
* 田村 友美、海上 耕平、新田 孝作
東京女子医科大学 泌尿器科
角田 洋一、奥見 雅由、石田 英樹、田邉 一成
国際医療福祉大学 熱海病院 病理診断科
 
金綱 友木子
昭和大学 解剖学講座 顕微解剖学
 
本田 一穂
聖マリアンナ医科大学 多摩病院 診断病理学
 
小池 淳樹

【背景】一般に機能低下が進行したグラフトに対する生検は行われず、グラフト機能喪失に至る病理所見を詳細に検討する機会は少ない。今回我々は異なる病態で移植腎機能が低下した3症例の摘出グラフトの病理所見を経過中の生検所見と合わせて検討し、移植腎機能廃絶の病因とメカニズムを検討したので報告する。

【症例1】62歳男性、IgA腎症を原疾患とする慢性腎不全で1994年透析導入となり、同年に当時63歳の母をドナーとして血液型適合移植を行った。移植後13、18年時のプロトコル生検にてIgA腎症再発の指摘があり、移植後22年時にCAAMR, IgA腎症再発, IF/TAを認めた。その後腎機能は悪化し、移植後23年時にCr4.93mg/dlとなったことから、弟(当時59歳)をドナーとする血液型適合、DSA陽性(DR12 MFI924)の二次移植を行った。摘出した一次移植腎では、CAAMR, CNI毒性の所見が顕著であり、高度の動脈硬化とAMRを背景とするIF/TAの進展を認めた。

【症例2】58歳女性、IgA腎症を原疾患とする慢性腎不全で2002年にpreemptiveで妹をドナーとして血液型適合移植を行った。2012年よりIgA腎症の再発の指摘を認め、その後IgA腎症は改善せず、腎機能は徐々に悪化し、移植後15年時Cr4.83mg/dl, UP(2 )、OB(2 )となったため、夫(当時65歳)をドナーとする血液型適合、DSA陽性(B61 MFI5828)の二次移植を行った。進行性活動性の再発性IgA腎症であり、明らかな拒絶を示唆する所見は認めなかった。

【症例3】27歳男性、SLEを原疾患とする慢性腎不全で2006年透析導入となり、2010年父(当時50歳)をドナーとして血液型適合、DSA陰性の生体腎移植を行った。術後経過は安定していたが、移植後5年プロトコル生検にてBK腎症stageBの診断であり、免疫抑制剤変更やIVIgで対応したがBK腎症は持続し、徐々にIF/TAが進行し、腎機能は悪化、移植後6年時に透析再導入となった。翌年、母(当時57歳)をドナーとする血液型二次移植を行い、一次移植腎を摘出した。限局性にSV40陽性で尿細管間質炎を認める(BKV 腎症stage B)、IF/TAを認め、拒絶はみとめなかった。

【まとめ】機能廃絶グラフトの病理学的検討は、移植腎の機能喪失の病因とそのメカニズムを解明する上で有用と考えられた。

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