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【目的】バンフ2013移植腎病理診断基準で、予後不良とされる慢性活動性抗体関連拒絶反応(Chronic, active antibody mediated rejection: CAABMR)が明確に定義された。今回、2013バンフ分類に基づき、過去2年間の生検検体を横断的に解析し、CAABMRの発生頻度及びその病理診断像と臨床所見の関連につき調査を行うことを目的とした。
【方法】2016年1月〜 2017年12月まで当院で行われた移植腎生検269症例の345生検検体を対象とし横断的に解析を行った。CAABMRの病理診断は2013バンフ分類に基づき診断した。
【結果】2016年1月〜 2017年12月まで当院で施行された移植腎生検345検体のうち、腎移植後1年以上経過し、CAABMR疑いの病理診断に至ったのは23症例から生検された27検体(7.8%)であった。以下、それぞれの項目については断りない限り中央値(四分位範囲、最小値-最大値)で示す。診断時期は移植後から109ヶ月(50.8-180.8,12-355)であった。術前にFACSクロスマッチを施行したのは9例で7例が陽性であり、7例全例で抗ドナーHLA抗体(DSA)が陽性であった。また生検時に23例中18例で抗ドナーHLA抗体(DSA)が検索され12例(66.7%)でDSAが陽性であった。CAABMR疑いとされた27検体の生検理由は、プロトコール生検が10検体(37%)、エピソード生検が17検体(63%)でエピソード生検において多く診断されていた。また、生検時のCrは1.65 mg/dL(1.29-2.74,0.67-18.76)でeGFRは33.7 ml/min/1.76m2(20.5-40.6, 2.8-94)であった。慢性組織障害を示唆するcgスコアは0(6検体、22.2%)、1(5検体、18.5%)、2(5検体、18.5%)、3(10検体、37%)であった。cvスコアは0(14検体、51.9%)、1(7検体、25.9%)、2(4検体、14.8%)、3(2検体、7.4%)であった。抗体による内皮細胞活性化の所見としてg ptc?2は25/27検体(92.6%)で認め、内訳はg ptcスコア2(2検体、7.4%)、3(4検体、14.8%)、4(8検体、29.6%)、5(8検体、29.6%)、6(3検体、11.1%)であり、g ptcスコア4以上は全体の70.3%であった。またC4d陰性(スコア1以下)は15/27検体(55.6%、その内血液型不適合は2検体)で認めたが、それらにおいてはg ptcスコア2が1検体で4以上が14検体であった。C4d陽性(スコア2以上)は12/27検体(44.4%)で血液型不適合検体は5検体であった。一方、g ptcスコアが1以下の2検体ではいずれもC4dスコア2以上であったが、そのうち1検体は血液型不適合症例であった。次にCrの中央値より1.65未満(Group A: 13検体)と1.65以上(Group B: 14検体)の2群に分けてみるとGroup BではGroup Aに比べcgスコアが有意に高かった(p=0.0074, Wilcoxonの順位和検定)が、cvスコアは両群間で差がなかった。またg ptcスコアおよびC4dスコアにおいても両群間で差は見られなかった。
【結論】バンフ2013分類における慢性組織障害を示唆するcg スコアは低腎機能症例で有意に高かった。また、g ptc≥2とC4d≥2を同時に満たさない症例が一定数存在しており、内皮細胞活性化の根拠の診断基準として上記のいずれかを満たすとされているのは妥当であると考えられた。慢性期(移植後約10年)の生検時の腎機能の良悪に関わらず、g+ptcスコアが進行している例が多く、過去の内皮細胞活性化が進行した結果としてのcg病変が腎機能に反映することが改めて示唆された。 |