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静注カルシニューリン製剤使用中に移植腎機能発現遅延を呈した献腎移植後の1症例 |
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大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学 |
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大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学講座(泌尿器科学) |
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阿部 豊文、中澤 成晃、角田 洋一、今村 亮一、野々村 祝夫 |
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桜橋医誠会クリニック |
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大阪大学大学院医学系研究科 先端移植基盤医療学講座 |
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症例は51歳女性、24歳時に原疾患は不明の腎不全で血液透析導入となり、血液透析26年目に脳死下献腎移植が行われた。ドナーは50代女性でクモ膜下出血により脳死判定に至った。術前の検査でHLA-A/B/DRは完全一致で、クロスマッチ試験はLCT法、FCXM法 T/Bともに陰性であった。グラフトは右腸骨窩に移植され、手術時間は5時間8分、全阻血時間は292分、初尿は103分後に確認された。術後2日目に右側腹部に高度な疼痛が出現し、ドレーン排液より高濃度のアミラーゼ(219261U/L)を検出したことから腹部CTを撮影したところ、小腸穿孔および腹膜炎を認めたため緊急で小腸部分切除術を施行した。術後無尿の状態が続いたためICUでCHDFを再開し、ICU退室後は血液透析を継続した。免疫抑制剤は通常のプロトコールで使用するバシリキシマブに加え、術後は絶食での管理となったため、プレドニゾロンとタクロリムス0.03mg/kg/日を経静脈的に投与開始した。タクロリムスの血中濃度は13-17ng/mlで管理されていたが、無尿の状態が持続していたため、原因検索を目的に術後14日目に移植腎生検を施行した。組織所見に拒絶反応を疑う所見は乏しく、間質に軽度の尿細管壊死と尿細管細胞に均一な空胞変性を比較的広範囲に認めた。糸球体には明らかな増殖性の変化はなく、係蹄の虚脱が目立っていた。血管は細動脈レベルの血管に硝子様変性が散見されたが、移植時生検でも認めていたことから持ち込みの病変であると考えられた。その他、細動脈の平滑筋細胞に傍核空胞の所見を認めた。血栓性病変は血管および糸球体に認められなかった。これらの病理所見像より、移植腎機能発現遅延の原因として移植後の急性尿細管壊死と消化管術後に起因する血管内脱水に加え、カルシニューリン阻害剤の毒性が増悪因子として作用したものと推測された。術後12日目より経口摂取を再開し、15日目からミコフェノール酸モフェチル1500mgが開始された。タクロリムスは術後19日目に静注製剤から徐放性製剤0.1kg/日に切り替えられた。その後、タクロリムスの血中濃度を5-10ng/mlで管理したところ、術後26日目より尿量の増加を認め、術後31日を最後に血液透析離脱となった。経口製剤と異なり、静注製剤の血中濃度の至適管理目標は定まったものはない。静注カルシニューリン製剤使用中に生じた移植腎機能発現遅延の原因特定に病理組織所見が有用であった一例を経験したので考察を踏まえ報告する。 |
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