慢性活動性抗体関連型拒絶の予後不良例と予後良好例についての臨床病理学的検討

市立札幌病院 病理診断科
* 辻 隆裕、石井 保志、岩崎 沙理、今本 鉄平、石立 尚路、
深澤 雄一郎
市立札幌病院 腎臓移植外科
見附 明彦、福澤 信之、原田 浩

【背景・目的】慢性活動性抗体関連型拒絶(CAABMR)は移植腎機能喪失の原因となる重要な病態である。組織学的・血清学的にCAABMRと診断された後、急速にCAABMRが進行して移植腎廃絶に至る予後不良例を経験する一方、数年の経過を経ても移植腎機能が保たれる比較的予後が良好な例も経験される。本研究では予後不良例と予後良好例の違いを臨床病理学的に比較検討することを目的とする。

【材料と方法】当施設で2010年7月-2016年7月の期間で、de novoの抗ドナー抗体(DSA)によるCAABMRと診断したのは27例であった。そのうちCAABMR診断後5年以内に移植腎機能喪失に陥った6例を予後不良群と定義した。また、CAABMRと診断後、少なくとも3年以上の生着が確認され、CAABMR診断後の3年間での血清クレアチニン(Cr)上昇が1.3倍未満であった8例を予後良好群と定義した。

【結果】レシピエントの年齢・性別、ABO適合/不適合、献腎/生体、CAABMR診断時の移植後経過日数、診断時の生検種別(episode/protocol)、 診断時と診断後1年のCr( mg/dl)と尿蛋白/クレアチニン比(g/gCre)、DSA種(classI/II/I+II)を比較した。予後不良群は、42.2±14.6歳、男女5:1、ABO適合/不適合=6:0、生体/献腎=4:2、2004±1310日、protocol/episode=4:2、診断時(Cr1.76±0.58、尿蛋白/クレアチニン比1.99±3.66)、診断後1年(Cr2.59±0.97、尿蛋白/クレアチニン比1.50±1.58)、class I:II:I+II=1:2:3であった。予後良好群は、40.5±17.4歳、男女5:3、ABO適合/不適合=7:1、生体/献腎=7:1、1705±952日、protocol/episode=6:2、診断時(Cr1.16±0.33、尿蛋白/クレアチニン比0.19±0.19)、診断後1年(Cr1.17±0.3、尿蛋白/クレアチニン比0.20±0.3)、class I:II:I+II=2:6:0であった。

【結論】予後不良群ではCAABMR診断時と診断後1年での血清クレアチニン値が有意に高かった(p=0.03、p=0.01)。CAABMR診断時生検での病理所見の比較検討も加える予定である。

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