慢性抗体関連型拒絶反応におけるホルマリン固定後検体でのCaveolin-1の染色性について

兵庫県立西宮病院 泌尿器科
* 山中 和明、深江 彰太、谷口 歩、中川 勝弘、岸川 英史、西村 憲二
兵庫県立西宮病院 病理診断科
岡 一雅

【目的】Caveolin-1(CAV-1)は慢性抗体関連型拒絶反応にて内皮細胞障害として発現する分子として報告されている。組織検体における発現の確認は凍結標本(IF)によるものが主体であったが、近年、CAV-1は中皮腫と肺腺癌を鑑別する抗体として、ホルマリン固定後検体に用いられるようになってきた。今回、ホルマリン固定後検体にて、慢性抗体型拒絶反応でのCAV-1の染色性について検討した。

【対象】兵庫県立西宮病院で、移植腎生検で慢性抗体関連型拒絶反応と診断された11名。

【方法】ホルマリン固定後検体にて、酵素抗体法でCAV-1の染色を行った。評価は、傍尿細管毛細血管(PTC)、糸球体内毛細血管(GBM)での発現を3段階分類した。ptc、cg、ptcbm、C4dのBanffスコアと比較検討した。

【結果】レシピエントの移植時年齢の中央値は33歳(10-51)、生検時年齢の中央値は42歳(28-55)、男女比は7:4(男:女)、ドナー年齢は55歳(33-63)、男女比は7:4(男:女)であった。全例がABO適合腎移植で、biopsyprovenの急性抗体関連型拒絶反応の既往のある症例は8例であった。それぞれのPTC / cgスコアは3:3 / 4例、2:1 / 4例、1:7 / 3例、0:0 / 0例であり、ptcbmスコアは2:1例、1:10例、0:0例であった。またptcにおけるC4dとCAV-1の発現は、C4dスコア3:0例、2:2例、1:5例、0:4例、CAV-1スコア3:9例、2:2例、1:0例、0:0例であった。またGBMにおけるそれぞれの発現は、C4dスコア3:8例、2:2例、1:0例、0:1例、CAV-1スコア3:7例、2:4例、1:0例、0:0例であった。電顕が施行された6例中5例で内皮下の浮腫状変化を認めた。

【結論】CAV-1はC4dと比較し、GBMでの発現は同等であった。ptcでのC4dの発現は乏しかったが、CAV-1は全例でスコア2以上の発現を認めた。また、ptc、cgの変化の乏しい症例においてもCAV-1の発現を同定することができ、光顕で確認される組織変化が生じる以前のより早期からCAV-1の発現が同定される可能性が示唆された。以上より、CAV-1はホルマリン固定後検体でも良好な染色性をもっており、内皮障害の同定に有用である可能性が示唆された。

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