当院におけるplasma cell-rich rejection症例の検討
=Acute T-cell mediated rejection症例との比較=
Clinicopathological study of plasma cell-rich rejection in our hospital
=comparison with acute T-cell mediated rejection=

京都府立医科大学附属病院 病院病理部
* 西村 綾子、小西 英一
市立大津市民病院 病理診断科
益澤 尚子
京都府立医科大学附属病院 移植・一般外科
原田 俊平、中村 緑佐、昇 修治、牛込 秀隆、吉村 了勇

【背景と目的】Plasma cell-rich rejection(PCRR)は形質細胞浸潤が優位な拒絶反応のことを指し、「形質細胞が浸潤する炎症細胞の10%以上を占める」とされる稀な病態である。PCRRは急性細胞性拒絶(ACR)の一型と考えられてきたが、その機序は不明であり、ステロイドを軸とした治療に抵抗性があり、予後不良な症例が多く、急性抗体関連拒絶(AMR)との関連も指摘されている。よってACRおよびAMRの両者を標的とした治療を検討すべきであるともいわれるが、症例数が少ないため治療法の確立には至っていない。今回、当院におけるPCRR症例群を、臨床的および病理組織学的にACR症例群と比較し、両者の異同について検討したので報告する。

【対象・方法】2008年1月から2017年3月までの当院移植症例をレビューし、PCRR群12例とACR群22例を抽出した。この2群について、Banffスコア(2013を基準とする)やAMR合併・移行の有無、移植後日数やCre値を比較検討した。

【結果】移植後日数はPCRRが有意に長く、また治療後のCre値はPCRRが有意に高値であった。Banffスコアはciおよびptc-bmのスコアがPCRRで高かったが、t、i、g、ptc、v、C4dといった急性拒絶に関与するスコアには有意差がなかった。また、AMR合併または移行を呈した症例は、PCRR 50%(6例/12例(疑い1例))、ACR 27%(6例/22例)であった。

【考察】今回の検討ではPCRRはACRに比して@移植から発症までの期間(移植後日数)が長いこと、A治療抵抗性であること、B微小血管炎(g、ptc)の程度に差がないにもかかわらずAMR発症の頻度が高いこと、が示唆された。更に、T細胞やB細胞などの浸潤細胞の詳細について、免疫組織化学的検討も加えて報告する。

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